マインドフルネスが夏バテに効く?その理由と夏バテに効果的な実践法3選
暑さが本格的になり、肉体的にも精神的にも疲労感を覚えながら日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。また、すでに夏バテ状態で、日常生活に影響が出ているという人もいるかもしれません。
今回は公認心理師・臨床心理士で、ヨガ講師でもある南舞さんが、夏バテが私たちにもたらす影響と、マインドフルネスの観点から夏バテに対処するための秘訣をお伝えします。
夏バテとは?
夏バテとは、厳しい夏の暑さや湿度などの気候条件に影響を受けて、疲労を感じたり、体力が低下したりする状態のことです。具体的な症状として、以下のようなものが挙げられます。
身体症状
・全身の疲労感
・食欲不振
・頭痛
・めまい
・吐き気や嘔吐
・眠気の持続や不眠
・筋肉痛やこむら返り
・発汗が増える
・胃腸の不調など
精神症状
・集中力や注意力の低下
・イライラする機会が増える
・やる気が起きない
・落ち込むことが増えるなど
夏バテと聞くと、身体症状を思いつく人も多いかもしれません。厳しい暑さによる疲労は、精神面にも影響を及ぼすことがあります。
夏バテと夏季うつの違い
夏バテと似た言葉で、「夏季うつ」と呼ばれるものがあります。
夏季うつとは、季節性感情障害(SAD)のひとつで、夏の時期に発生する季節性のうつ病のことです。夏バテと夏季うつ、どちらも夏に関連する体調不良ですが、大きな違いは、精神症状の有無、症状の持続期間・深刻度にあります。
【夏バテ】
・高温多湿や脱水、栄養不足などの身体的な不調が原因
・イライラする、集中力が低下するなどの精神的な症状が見られることもあるが、一時的なもの
【夏季うつ】
・高温や日照時間の変化など、精神的なストレスや体内リズムの乱れからくる抑うつ状態
・夏バテに比べて長期的になることが多いため、専門機関での治療が必要
参考:季節性感情障害に気づいて治療をするためのヒント|MSDマニュアル家庭版
夏バテの原因となるもの
夏バテについて少しわかってきたところで、ここでは夏バテを引き起こす原因について紹介します。
(1) 寒暖差による自律神経の乱れ
外は暑いのに、室内はエアコンがとても効いていて寒いことってありますよね。そうした屋外と室内の寒暖差を受けて、自律神経のバランスが乱れがちです。
暑さで交感神経の動きが優位になりすぎると、体力が消耗し、疲れやすくなります。一方で、交感神経の影響により、副交感神経の働きが抑制されます。すると、心身が休まらず、消化機能や睡眠の質に影響します。
(2) 水分や塩分、ミネラルの不足
暑さによって大量に汗をかくために、体内の水分が失われます。その際に、水分だけでなく、塩分やミネラルも排出されてしまい、脱水症状を引き起こします。
また、塩分やミネラルは自然に補充されることはないため、水分補給の際には意図的に塩分やミネラルを摂ることを心がけましょう。
(3) 食欲不振による栄養不足
暑さで食欲が落ちると、麺類や冷たいもの、喉越しのよいものなど、食べやすいものを選びがち。
そういった栄養の偏りにより、必要な栄養をとることができず、疲労の回復が遅れ、さらに体調を崩すことになってしまいます。
夏バテとストレス
夏バテは身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスとも関連しています。
例えば、「暑くて不快だ」という思考が常に頭の中に浮かんでおり、その状態が長期化すると、イライラなどのネガティブな感情が増える、集中力が低下し、日々のパフォーマンスが落ちる可能性があります。
また、暑さで寝苦しい夜が続き、睡眠の質が低下することによって疲労が取れず、さらにストレスが増えるといったこともあります。
ついついしがちな間違った夏バテ解消法
厳しい暑さによって心身に疲れた時に、本当は逆効果なのにやってしまいがちなことについていくつかお伝えします。
(1) 寝る時はエアコンを我慢する
「エアコンの風は体に良くない」とか「電気代がもったいない」などの理由から、夜はエアコンを消して寝る人もいると思います。
しかし、エアコンを消して寝ると、寝苦しさによって睡眠の質が低下したり、熱中症になる可能性もあります。我慢せずにエアコンをつけるようにしましょう。
また、エアコンの温度が低すぎることによって不調を招くこともあります。25〜28度くらいを保ち、冷えすぎないよう工夫しましょう。
(2) スタミナのあるものを食べる
夏バテ防止のために、スタミナをつけようと油たっぷりの肉類などこってりとしたものを食べようとするのは、実は間違い。
暑さによって胃や腸などの消化器系が弱っている時に油っぽいものを食べることによって、逆に負担をかけることになってしまいます。
豚肉や玄米、カツオ、豆類などに含まれるビタミンB1や、フルーツなどに含まれるビタミンC、梅干しやレモンなどに含まれるクエン酸などを積極的にとることがおすすめです。
(3) 入浴をシャワーで済ませる
暑いと湯船に浸かるのを避けて、シャワーで済ませようとするのもあまりおすすめできません。湯船に浸かることで、自律神経系の副交感神経の働きを優位にし、心身ともにリラックス効果が期待できます。
その後の入眠をスムーズにしてくれるというメリットもあるので、暑い日も湯船につかるよう心がけましょう。
マインドフルネスが夏バテに役立つ理由
夏バテから起きる、精神的な不調への対処法としておすすめなのが「マインドフルネス」です。
マインドフルネスとは、「今、この瞬間に起きている目の前のことに意識を向ける」という心の状態のことです。
マインドフルネスを行うことで、夏バテの精神的な不調に対して以下のような効果があるといわれています。ここではその理由を詳しく紹介します。
(1) ストレスの軽減
マインドフルネスは、ストレスを減らすことに役立つといわれています。看護師のバーンアウトを軽減しウェルビーイングを改善する目的で、8週間に渡るMBSRを行った人たちは、しなかった人たちに比べてストレスのレベルが低下したことが明らかになっています。
例えば、厳しい暑さを前にして、「暑すぎて嫌になる」「だから夏は嫌いだ」「暑すぎて何もしたくない」「こんなに暑いのに電車の中は混んでいて不快だ」など、ネガティブな思考や感情が次々に湧いてくると思います。これがさらに派生すると、「去年も暑くて嫌だったなぁ」という過去のネガティブな体験や、「この先はいつまでこの暑さが続くのだろうか」など、先の見えない未来への不安などが思い出されることも。
すると、暑さへの否定的な感情がさらに強くなったり、暑さへの不安にとらわれて現在のやるべきことに集中できない日々が続くなど、ストレスがどんどん溜まっていきます。
マインドフルネスでは、今この瞬間に意識を集中することを大切にします。例えば、暑さに対する不快感やイライラをただ「感じる」に留めることで、暑さそのものを冷静に観察します。
そして、この暑さを「悪いもの」と判断せず、暑いという事実そのものを受け入れることで、暑さに対する感情的な反応を減らすことができます。すると、暑さに対する抵抗が弱まり、ストレスを軽減することに役立ちます。
参考:Cohen-Katzら(2005). The Effects of Mindfulness based Stress Reduction on Nurse Stress and Burnout, Part II. A Quantitative and Qualita. Holist Nurs Pract, 19, (1).
(2) 睡眠の質の向上
ある研究で、さまざまな原因で睡眠障害を抱えているものの、治療を行っていない患者に対して、2〜8週間かけて合計3〜26時間のマインドフルネス瞑想の実践を行う研究を行いました。
その結果、マインドフルネス瞑想を実践した人たちは、行っていない人たちと比べて、プログラム終了後だけでなく、半年以上経っても睡眠に対する満足感が継続したという結果が出ました。
この結果のように、マインドフルネスは、睡眠の質を高めることにも役立ちます。夏の寝苦しい時にこそぜひ取り組みたいものですね。
参考:Heather L Ruschら(2018). The effect of mindfulness meditation on sleep quality: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Annals of the New York Academy of Sciences, 1445, (1).
(3) 自律神経系への影響
夏バテは、厳しい暑さや急激な水分の不足によって、自律神経系の交感神経が優位なアクティブな状態になりやすく、心身ともにストレスフルな状態になりがちです。
しかし、マインドフルネスを行うことによって、副交感神経が優位な状態に切り替わり、心身ともにリラックスした状態を意図的に作り出すことができます。
参考:Tammi RA Kralら(2018). Impact of short- and long-term mindfulness meditation training on amygdala reactivity to emotional stimuli. NeuroImage, 181.
夏バテにおすすめのマインドフルネスとは?
マインドフルネスは、暑さによる不快さや、睡眠への影響に効果があるので、ぜひ取り組んでほしいところです。そこで、日常的に取り組みやすいマインドフルネスの手法をいくつかご紹介します。
(1) ボディスキャン
ボディスキャン瞑想は、身体の各部位に丁寧に意識を向けていく瞑想法です。体の各部位に起きている感覚(体の温度、血液が流れている様子などの体の内側の感覚、皮膚の表面の感覚など)を繊細に感じ取りながら、心身を緩めていきます。
ボディスキャンによって身体の緊張をほぐすことで、夏バテで疲れた体を休め、回復を促します。また、身体の状態に対する意識が高まることにより、どの部分が特に疲れているか、ストレスを感じているかといった普段見落としがちなサインを拾うことができます。そして、それに応じた適切な対処をとることができます。
ボディスキャン瞑想については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(2) マインドフルネスイーティング(食べる瞑想)
マインドフルネスイーティング(食べる瞑想)とは、食べたり、飲んだりすることに専念して、五感をフル活用して味わうことです。
暑い夏は食欲が落ちがちですが、そんな時こそ少量でいいので、いつもよりゆっくり味わいながら食事をしてみましょう。咀嚼回数も自然と増えますし、消化がスムーズになり、夏バテによる胃腸の不調を軽減するのに役立ちます。
食べる瞑想(マインドフルイーティング)』のやり方や効果は、以下の記事で詳しく解説しています。
(3) マインドフルネス呼吸法
マインドフルネス呼吸法は、「今、ここ」で起きている身体感覚の代表である、呼吸に注意を向けていきます。吸う息と吐く息に注意をむけていくことで、思考優位な状態から、体の感覚を優位にする状態へと切り替えていきます。
深く呼吸をすることによって、副交感神経が刺激され、体全体がリラックスします。そして、夏バテによるストレスや疲労が軽減されます。また、厳しい暑さに意識がとらわれがちですが、そんな時にも呼吸に集中することによって、あらゆる雑念と距離を置き、今すべきことに集中して日常を送ることができます。
マインドフルネスとは何かについては以下の記事で詳しく解説しています。
夏バテ対策でよくあるQ&A
夏バテの症状や対策について、疑問に思いつつも意外と知らない3つの質問にお答えします。
(1)夏バテが治るまでの期間は?
夏バテの回復には個人差があり、数日〜1週間以内で治ることもあれば、数週間かかる場合も。なかなか治らないようであれば、早めに医療機関の受診をしましょう。
(2)夏バテでお腹がゆるくなるのはなぜ?
暑さによって水分補給がいつもより多くなる、あるいは冷たいものを摂りすぎることや、自律神経の乱れにより、消化機能が低下し、いつもよりお腹がゆるくなる可能性があります。
(3)夏バテになりやすいのはどんな人?
不規則な生活が続いていて、ストレスが溜まっている人は、もともと自律神経のバランスが乱れている可能性があります。
そのため、厳しい暑さによる睡眠や寒暖差の影響によってさらに自律神経の乱れに拍車がかかり、夏バテになる可能性が高まります。
マインドフルネスで夏バテを予防・解消しよう!
「MELONオンライン」では、夏バテでお疲れの心身のケアに役立つ、マインドフルネスのクラスを多数ご用意しています。
夏バテの時におすすめのクラスをいくつかご紹介しますので、日々のセルフケアとして役立ててみてください。
(1)Body Scan
この記事でご紹介したボディスキャンは、仰向けになって、体の隅々をありのまま観察する瞑想法で、見落としがちな体のサインに気づけるようになります。
寝る前の心身をゆるめるのに役立ててみてください。
(2)Breath
さまざま呼吸法を使って、呼吸そのものに集中したり、呼吸に関わる筋肉をほぐしたりして、心を集中しやすい状態へ導きます。
普段呼吸の浅さを感じていたり、呼吸法を1人で取り組むのは難しいという方はぜひ参加してみてください。
(3)Focus
音や香りなどのツールを使い、さまよう心を鎮める練習をします。
暑い時に浮かんで来るさまざまな思考や感情と上手に付き合うためのコツを掴むのにおすすめのクラスです。
まとめ|マインドフルネスで夏バテによるストレスや疲労を軽減しよう
今回は、夏バテにマインドフルネスがどう役立つのか、そして具体的な方法についてお伝えしました。
厳しい暑さに対して、心身の疲労をケアしたり、「暑い」という思考へのとらわれをどのように対処していくかが、夏バテとうまく付き合っていく上では大切なことかもしれません。
マインドフルネスの視点も取り入れながら、夏バテ対策に取り組んでみてくださいね。