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子ども向けマインドフルネス実践法|現状や学校での導入事例も紹介

メンタルヘルスやメンタルケアという言葉は誰しも耳にしたことがあると思いますが、その対象は「大人」とされがちです。しかし、多くの子どもが不登校や自殺といった深刻な問題だけでなく、日常生活でのストレスや不安、人間関係のトラブルなど、さまざまなメンタルヘルスの課題に直面しています。

つまり、大人のメンタルヘルスが重視されるのと同様に、子どものメンタルヘルスへの配慮がいま求められています

そこで注目されているのが、科学的に効果が証明されているマインドフルネスです。

今回は子どもたちを取り巻くメンタルヘルスの現状を踏まえながら、マインドフルネスが子どものメンタルにどうアプローチするかや実践方法についてご紹介します。


マインドフルネスとは何かをもっと知りたい人は、「マインドフルネスとは? 〜 マインドフルネスの全てを体系的に解説 〜」をご覧ください。

子どもを取り巻くメンタルヘルスの現状

ノートに鉛筆で書いている画像

子どもたちのメンタルヘルスの現状を知る指標として、不登校生徒数や自殺者数があります。ここでは、直近の数字を確認しながら課題を探ります。

不登校になる小学生・中学生が年々増加

小中学校の不登校生徒数は文部科学省によって毎年集計されており、令和4年度における不登校生徒数(小学生・中学生)は、過去最高の299,048人でした。平成29年度の小中学生の不登校割合は1.5%でしたが、令和4年度は約2.1倍の3.2%にまで増加しています。

増加の理由については、いくつかの要因が組み合わさる「複合要因」が指摘されています。

文部科学省が発表した令和2年度不登校児童生徒の実態調査によると、不登校になる小学生のきっかけは、「先生のこと(30%)」や「身体の不調(27%)」などが挙げられています。一方中学生では、「身体の不調(33%)」や「勉強が分からない(28%)」などが上位を占めています。

ただし、「きっかけが何か自分でもよくわからない」という回答も2割程度あり、不登校になる理由は多岐にわたるのが現状です。

参考:令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要|文部科学省

参考:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要|文部科学省

子どもの自殺者は過去最高水準

厚生労働省の調査によると、令和5年における児童生徒の自殺者数は513人で、令和3年から40人以上増加しています。また、2年連続で過去最高水準となっています。

自殺理由はさまざまで、家庭問題や学校問題、健康問題などさまざまです。そのため、学校や家庭に限らず、あらゆる場所で積極的に子どもたちの心をケアしていく対策や、子どもが安心して相談できる環境づくりが求められています。

参考:令和5年中における自殺の状況|厚生労働省

子どもに対するマインドフルネスの効果

マインドフルネスは、子どものメンタルヘルスを守る方法として期待されています。実際にどのような効果があるかを、研究結果を用いて解説します。

マインドフルネスの効果とは?

そもそもマインドフルネスとは、「主に瞑想を通じて行う心と身体の総合トレーニング」のことです。過去や未来ではなく、今この瞬間に意識を向ける練習を重ねていくことで、ストレスや不安とうまく付き合えるようになります。

マインドフルネス瞑想を継続的に実践すると感情のコントロールがしやすくなったり、注意力や集中力、共感力が向上したりします。

子どもへの特徴的な効果としては、精神的な疲労を回復させるだけでなく、緊張を和らげ落ち着けたり、集中力を高めてやる気を引き出せたりすることが挙げられます。

『マインドフルネス瞑想』のすごい効果とは?毎日5分でも継続が大事!」という記事でも、効果について詳しく解説していますので、チェックしてみてくださいね。

子どもへの効果も確認されている

滋賀大学が小学校6年生に対しマインドフルネスのプログラムを実施したところ、70%以上がプログラムに肯定的に評価し、半数以上が集中力の向上やリラックス効果に役立つと回答しました。

また、回を重ねるごとに、肯定的な感想だけでなくマインドフルネスの「気づき」につながる感想が増えました。

この研究結果から、マインドフルネスは決して「子どもには理解できない難しいもの」ではなく、適切な方法で行えば多くの子どもが効果を感じられるということがわかります。

参考:芦谷ら(2017).マインドフルネス・プログラムによる小学生に対する心理教育アプローチ.滋賀大学教育学部紀要, 第67号, pp.109-122

教育現場でのマインドフルネスの導入事例

教室で子ども達が床に座っている画像

国内外では、すでに教育現場でマインドフルネスが活用されています。ここは導入事例をいくつか紹介します。

【イギリス】メンタルヘルス向上プログラム

2019年2月、イギリスのDepartment for Educationが、子どもを対象にしたOne of the largest mental health trials launches in schoolsを発表しました。マインドフルネスを含むメンタルヘルスを向上させる取り組みをイギリスの370の学校で実験的に行うというものです。

この政策の実施には、イギリスの5歳〜19歳までの青少年のうち、8人に1人が何らかの精神的な不調を抱えているという背景があります。また、精神的な不調を抱える子どもは過去10年で増加傾向にあります。

プログラムでは、子ども向けに「マインドフルネス瞑想」「リラクゼーション法」「呼吸法」などを授業の一環として教えます。そして、どの方法で効果が見られるかを調査する取り組みです。

研究は2021年までに第一段階が終わり、現在はより強固な根拠を調査するために対象とする学校を増やして第二段階の調査に入っています。

参考:One of the largest mental health trials launches in schools|GOV.UK

【フィンランド】ムーミンと学ぶマインドフルネス

国連による2024年版の「世界幸福度報告書」で、7年連続1位のフィンランドではフィンランド発祥のキャラクター「ムーミン」とマインドフルネスをコラボさせたプログラム「Friendship skills with the Moomins」が行われています。

プログラムはフィンランド赤十字社が主催し、未就学児から小学生を対象に、子どもに人気のあるキャラクターを使うことで、マインドフルネスを身近に感じられるように工夫されています。

教材は、「自己知識・フレンドシップスキル・思いやりと自己思いやり・新しい友達と知り合う・孤独」のセクションで構成され、それぞれのセクションでマインドフルネスの練習を行います。

参考:World Happiness Report 2024|The World Happiness Report

また、「マインドフルネスは子どもにも効果ある?海外の教育での導入事例3選」という記事では海外における導入事例についてさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

【国内】小学生向けマインドフルネスプログラム

MELONでは小学生向け「子ども向けの動画マインドフルネス・プログラム」を開発し、実際に全国複数の小学校へ無償提供しました。

プログラムの検証結果より、2か月間マインドフルネス瞑想を継続することで、子どもにおけるストレス解消の効果を有する可能性が統計的に確認されました。また、全体の約71%の子どもには、ストレス反応の改善効果が確認されています。

詳しい内容は「MELON、全国の小学校にマインドフルネス・プログラムを導入し、明確なストレス解消の効果を確認」でご覧ください。

子どもがマインドフルネスを実践するポイント

手を挙げている子ども達の画像

ここでは、子どもがマインドフルネスを行う際は、いくつかのポイントを押さえましょう。大人との違いについて紹介します。

(1)5〜10分から始める

子どもの集中力は大人ほど持たないため、いきなり長時間のマインドフルネス瞑想は続きません。まずは5〜10分から始めてみましょう。

(2)「楽しい」と組み合わせる

マインドフルネス瞑想は、呼吸を観察したり、体の感覚を感じたりすることに焦点を当てますが、子供たちは退屈に感じる可能性があります。

子どもがマインドフルネスを「楽しい」と思えるかが、何よりも大切です。例えば、ムーミンのようなキャラクターやアニメーションを用いたり、体を動かしたりなど、さまざまな方法と組み合わせて行いましょう。

(3)毎日続ける

大人であろうと子どもであろうと、マインドフルネスは「毎日の継続」によって効果を発揮します。

大人の場合は、8週間行えばある程度効果を感じることができるといわれています。しかし、子どもは個人差が大きいため、8週間を過ぎても効果が出るまでは毎日続けることが大切です。

マインドフルネスはスポーツのようなもので、簡単に上達するわけではありません。コツコツ続けていくことで上手になり、効果も感じられるようになっていきます。また、大人よりも子どもの方が習慣化しやすいため、幼少期からのその時の年齢に合ったマインドフルネスを積み重ねていくことが重要です。

【子ども向け】マインドフルネスのやり方・実践方法

瞑想をする子どもの画像

ここでは、子ども向けのマインドフルネスの方法をご紹介します。子どもには、じっとしているマインドフルネス瞑想よりも、体の動きがある「月のポーズ」「ねこのポーズ」がおすすめです。

月のポーズ

  1. 椅子に浅めに腰を掛けます。背すじを伸ばし、足裏をピッタリと床につけましょう。
  2. 吸う息で、右手を天井に伸ばします。左手は「腰の当たり」か「椅子の座面」に置き、吐く息で身体を左に傾けてください。傾きは、わずかでも構いません。
  3. そこで少しキープして、のんびりと呼吸を繰り返しながら「身体の伸び」を丁寧に感じ取ります。(約30秒)
  4. ゆっくりと上体を起こして腕を下げます。身体の余韻を感じてみましょう。
  5. 逆も同じように行います。

ねこのポーズ

  1. 椅子に浅めに腰を掛けます。背すじを伸ばし、足裏をピッタリと床につけましょう。
  2. 胸の前で指を組みます。一息吸って、吐きながらその腕を前へ伸ばし、背中を丸くしておへそを覗き込んでいきましょう。
  3. そこで少しキープして、のんびりと呼吸を繰り返します。呼吸によって「背中が膨らんだり」「しぼんだり」する感覚を感じ取りましょう。(約30秒)
  4. 最後に一つ息を吐いたら、吸う息で上体を起こし手は楽な位置へ置きます。身体の余韻を感じてみましょう。

他のポーズにも試してみたいという方は「【動く瞑想】『マインドフルネスヨガ』のやり方とは?おすすめヨガポーズ4選」をご覧ください。

子ども向けマインドフルネスでよくあるQ&A

ピンクの背景に青いクエスチョンマーク

最後に、子どもがマインドフルネスを行う際によくある質問にお答えします。

誰とどこで行うのがいいですか?

基本的にどこでも行えます

家で家族みんなと一緒に行えば、マインドフルネスを行なうという体験を共有できます。

子どもがマインドフルネスを行なっている最中に、子供が感じていることや疑問に思ったことを否定しないで、じっくりも耳を傾けてあげましょう。そして、親も思ったことや感じたことを話してみましょう。お互いに体験を共有することでさまざまな気づきを得ることができたり、親子の絆を育む機会にもなります。

学校で行う場合は、周りのクラスメイトと一緒に楽しみながらマインドフルネスを行えます。励まし合い、協調性を育めることもとても良い点です。

どのくらいの頻度で行うといいですか?

毎日やるのが最も効果的です。子どもの場合は、基本的に自分の力だけで習慣化することは難しいため、初めは親がマインドフルネスを行う時間を決めて一緒にやってあげましょう。

子どもが「楽しい」と感じることが重要ですので、嫌がっている時は無理せずに子どもの意思を尊重してください。

何歳から始められますか?

個人差があるため一概には言えませんが、3歳くらいから始められます。

小学生・中学生それぞれにおすすめのマインドフルネス瞑想はある?

小学生は、体を動かしながら行うマインドフルネスを行うのが良いでしょう。良くも悪くも体力が有り余っており、じっと座って行うマインドフルネスは難しいことが多いため、体を動かしながら行えると継続がしやすくなります。

中学生は、体を動かしながら行うものに追加して座って行うマインドフルネスも取り入れてみましょう。子どもの年齢に合ったマインドフルネスのやり方を見つけていくとより習慣化しやすくなります。

マインドフルネスをやってはいけない子どもは?

基本的にマインドフルネスは多くの子どもにとって有効は方法になりますが、現在心の健康に課題があり、心のケア・サポートが必要な場合や、心理的・感情的にトラウマがあるなどといった場合は医師や専門家に相談の上、指示に従ってください。

まとめ|子ども向けのマインドフルネス

今回は、子ども向けのマインドフルネスについて紹介しました。海外で取り組まれていることやMELONでの小学生向けのプログラムによってマインドフルネスが子どもにとっても有効であることが証明されています。

また、子ども向けのマインドフルネスの実践方法についても解説しましたので、ぜひご家庭でも取り組んでください。

MELONのYouTubeチャンネルでは、小学生向けの瞑想法も紹介しています。興味のある方はぜひ試してみてくださいね。


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