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誰かを支える「ケアギバー」に必要なセルフ・コンパッションとは

介護士の女性と、車椅子に乗っている高齢女性の画像

ケアギバーとは日常生活の中で「誰かを支えている人」のことを指します。私たちは皆どこかしらでケアギバーの側面を持っていますが、その役割を担う時には疲れやストレスを感じることが少なくありません。

そんな「ケアギバー=私たち」のためのセルフ・コンパッションについて考えるスペシャルクラスが、2023年1月14日にMELONオンラインで開催されました。講師は米国ハコミ研究所・認定セラピストの松本真紀子さんで、今回の記事はクラス内容を文章化したものになっております。

「他者を思いやり、繋がるからこそ生まれる痛みや疲れにどのように向き合うのか」という点がクリアに理解できる内容となっておりますので、是非最後までチェックしてみて下さいね!

ケアギバーが抱えやすい「共感疲労」

落ち込む女性の画像

私たちは多かれ少なかれ皆ケアギバーとしての役割を果たしていますが、苦しんでいる人の気持ちに共感すると、相手に圧倒されたり飲み込まれたりして心が痛むことがあります。これを「共感疲労」と呼び、人と繋がっているからこその痛みだと解釈することができます。

共感疲労が発生するプロセスを科学的に説明する際に重要なワードとなるのが「ミラーニューロン」です。ミラーニューロンとは脳内に存在する神経の名称であり、他者の体験を自分の身体で知覚するためのものです。

例えば自分の身近な人が不機嫌だった場合、その人の表情や声のトーン、瞬きの回数に至るまで、私たちは無意識のうちに知覚しています。この際に活性化しているのがミラーニューロンであり、相手のネガティブな感情が自分にも伝染します。すると自分の暗い気持ちをまた相手が受け取り、負のスパイラルが起こることになってしまいます。これはケアギビングで起こりやすいシチュエーションです。

ケアギバーとして「疲れを感じているサイン」を見逃さないで

黄色信号の画像

実際のクラスでは、疲れを感じているサインについて参加者の皆さんからコメントをして頂きました。その内容を箇条書きでご紹介します。

・普段なら許せることも許せなくなる
・相手に優しさを向けられなくなる
・首や肩が凝る
自分の思い通りにしたいという気持ちを持つようになる
「もう嫌だ」と泣きたくなる
寂しさや孤独を感じる
眠れなくなる

このようなサインを放っておくと自分自身がどんどん追い詰められてしまいます。ここからは「共感」「コンパッション」「セルフ・コンパッション」の違いを理解し、苦しさと付き合う術を学んでいきます。

共感とコンパッションの違いはどこにある?

ノートのクエスチョンマークが書かれている画像

そもそも「共感」と「コンパッション」は似て非なる概念です。

心理学者のカール・ロジャースは「共感」「相手の世界で起きていることを内側から見て捉えた的確な理解、そして相手の個人的な世界をまるで自分の世界のように感じること」と定義しています。

一方コンパッションは日本語で「慈悲・思いやり」と訳される言葉であり、「あなたに共感した上で、さらに愛情で包み込みます」という概念です。

しかし自分を疲れさせてくる人に対してコンパッションを持つことは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで重要になってくるのが、今回のテーマである「セルフ・コンパッション」です。

誰かを思いやる「基盤」がセルフ・コンパッション

ハートを手にもつ女性の画像

ダライ・ラマ14世の言葉に「他者への真の思いやりを育むためには、まず思いやりを育むその基盤が必要です」というものがあります。この「基盤」にあたるのがセルフ・コンパッションであり、他者を思いやるためには自分自身への思いやりが必要なのだということを端的に示しています。

セルフ・コンパッションは「マインドフルネス・共通の人間性・自分への優しさ」という3つの要素から構成されています。以下では各項目を詳しく解説致します。

セルフ・コンパッションの構成要素 ①マインドフルネス

1つ目のマインドフルネスは、自分が感じている感覚を押し込めたり過度に反応したりするのではなく、「今自分はしんどいんだな」とありのまま気付くことを指します。これは言い換えると「バランスのとれた気付き」とも定義できます。

セルフ・コンパッションの構成要素 ②共通の人間性

2つ目の共通の人間性は、人間は皆どこかのタイミングで苦しい時期があり、それが人生にとって必要な要素であるからこそ、互いに労りサポートをする必要があるということです。あなたはたった1人で苦しんでいるわけではなく、実は共通性で他者と繋がっているということになります。

セルフ・コンパッションの構成要素 ③自分への優しさ

3つ目の自分への優しさは、自分自身の痛みを無視したり遠ざけたりせず、労わりと愛情を持つことと定義できます。具体的には「友人に対応するように自分自身に対応する」ことを意識すると、自分自身への優しさを持ちやすくなります。

日常(その場)でセルフ・コンパッションを実践する方法

お腹に手を当てる女性の画像

ケアギバーは自分が辛い・苦しいと感じていても、その場から離れることができない場合が多くあります。ここではケアギビングの現場でも実践できるセルフ・コンパッションをご紹介しますので、是非参考にして下さい。

  1. 自分の身体で負担を感じているところ(例:胸・お腹・腕)に手を置き、安心感がある部位を探す。もし身体に触れたくない場合は、触れなくても大丈夫。
  2.  手のひらの温かさや柔らかさを感じる。
  3. 手を触れたまま呼吸に意識を向け、身体を通る空気の流れを感じる。
  4.  自分が今必要としているイメージや言葉を呼吸にのせてみる(例:光のひだまりのイメージ・大変な中でもよく頑張っているね・この苦しさから早く解放されますように など)

辛い時に誰かが背中をさすってくれると、それだけで安心することがありますよね。実は自分の手でそれを行っても同じような効果があることが研究で分かっています。身体に手を触れた状態でゆっくりと呼吸を行い、自分にとって必要な労いを自分自身に与えてみましょう。もちろん長い時間でなくても構いません。

ケアギバーのためのセルフ・コンパッション|まとめ

風鈴の画像

今回はケアギバーがどのように自分や相手に対してコンパッションを持てば良いのかをテーマとしたスペシャルクラスでした。日々身をすり減らして「与え続けている」あなたも、一度身体に手を当てて深呼吸をしてみましょう。辛いこと、苦しいこと、逃げ出したいことに立ち向かう中で大切なのは、マインドフルネス、1人ではないという意識、そして自分への優しさです。

このクラスの内容をフルバージョンで確認したいという方や、マインドフルネスを深めてセルフ・コンパッションに繋げていきたいという方は、MELONが提供する「MELONオンライン」というオンライン・マインドフルネスサービスがおすすめです。

インドフルネス初心者の方、一人だと継続できない方、やり方が正しいのか不安な方も、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが丁寧に分かりやすく実践のサポートをするので安心です。

2週間無料で体験できますので、気になる方はぜひチェックしてみて下さいね!

MELONオンラインの画像

講師紹介:松本 真紀子さん

米国ハコミ研究所・認定セラピスト、MSC講師 (Trained Teacher)、MBSR講師

10年以上を過ごした米国オレゴン州を離れ、現在は高知県在住。マインドフルネスを主体とする米国生まれの心理療法・ハコミセラピーを用いて、主にオンラインで個人セッションを行っています。また、マインドフルネスやセルフ・コンパッションの教育にも携わり、入門講座や8週間コースの開催及び援助職の方のためのサポートグループなども行っています。

ホームページ.: https://www.tsunagu-mindfulness.com/