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つい自分を責めてしまいがちな人に。「セルフ・コンパッション」を育むことで、自分への接し方を変えてみませんか?

男性が両手を胸に当てている

ここ数年で“自己肯定感”という言葉を聞く機会が増えた方も多いのではないでしょうか?ただ、ありのままの自分を肯定したり好意的に受け止めることがなかなか難しいという人も多いかもしれません。つい自分で自分を責めてしまいがちな人にぜひ知ってほしいのが、自分を思いやり慈しむ、「セルフ・コンパッション」の考え方です。

今回はMELONインストラクターであり、セルフ・コンパッションのスキルをトレーニングするための心理教育プログラム、MSC(マインドフル・セルフ・コンパッション)講師でもある金田絵美さんへのインタビューを元に、セルフ・コンパッションの基本的な考え方、セルフラブとの違い、そして日常生活の中で実践しやすいセルフ・コンパッションを高めるためのヒントをご紹介していきます。

セルフ・コンパッションとは「親友に接するように自分自身に接すること」

ハート型の穴が空いている紅葉した葉

セルフコンパッションとは誰かが苦しんでいるときに助けてあげたいという気持ちを自分に向けること。もっと分かりやすく表現すると「自分が辛いときに、自分が友達や親友に接するような接し方で自分自身に接すること」です。自分が辛い体験をしているとき、「もし友達が同じ体験をしていたらなんて声をかけるだろう?」と考えて、その言葉や態度を自分に向けてみるのがセルフコンパッションの基本的な考え方です。

この、“友達や親友”というところが実は大事なポイントです。例えばパートナーや自分の子どもを想定すると、距離が近すぎて甘やかしになってしまったり、複雑な気持ちが湧いてきてなかなか思いやりを向けにくいことも。その点、友達や親友だと適度に程よい距離感で優しい態度で接したり、励ます言葉が出てきやすいのです。

自己肯定感を高める方法はいろいろありますが、その中の一つとして、クリスティン・ネフ博士というアメリカの女性が第一人者として提唱した概念がセルフ・コンパッションです。この概念が広まり始めたのは、2010年頃からと言われてます。

自己肯定感を高める概念として、セルフ・エスティームという考え方もあります。自分のやっていることに自信や誇りを持ち、心に余裕が生まれるセルフ・エスティームは上手くいっているときは良いのですが、自分が辛いとき、思うようにいかないときにはむしろ自信がなくなってしまうことも。

セルフ・エスティームとセルフ・コンパッションの違いを分かりやすく説明するために、以下のように表現することもあります。

・セルフ・エスティーム=調子がいいときにはチヤホヤしてくれるけれど、本当に困っているときにいなくなってしまう友達

・セルフ・コンパション=辛いとき、本当に困ったときにそばにいてくれる友達

どちらも自己肯定感に関係する概念ですが、実は全く正反対の考え方なのです。

自分を責める声=自分のことを守ろうとしている!?

落ち込んで壁にもたれてうずくまっている女性

物事が上手くいかないとき、何かに失敗したとき、無意識のうちに聞こえてくる自分を責める声。その声は意外なことに、自分がこれ以上傷つかないようにするためだったということはご存じでしょうか?先に自分で自分を責めておく方が、あとから他人から言われてもショックが少ないので、必要以上に謙遜したり自分を低く見せようとしてしまうという仕組みなのです。

自分を責める声は怖い存在ですが、よく観察すると、実は自分を守ろうとしていることが分かります。このように「自分の中に内在化している、自分を責める声がどういう仕組みでできているのか」ということを理解すると、まず怖くなくなってきますよね。

そしてその声ときちんと向き合って、「過去はそうだったかもしれないけれど、大人になった今はもう大丈夫だよ」などとゆっくり対話していくと、その声のトーンはどんどん優しくなっていきます。

このように自分の過去の体験の積み重ねなどで無意識のうちにもつれてしまった糸は、セルフ・コンパッションの理論を正しく学んでいくことで少しずつ紐解いていくことができます。

セルフ・コンパッションとセルフラブの違いとは?

男性が両手を胸に当てている

自分に優しくすると、わがまま放題になってしまうのではないか?成長しないのではないか?そんな風に感じる人も多いかもしれませんが、単なる甘やかしとセルフ・コンパッションでは優しさの中身に違いがあります。甘やかしが表面的なその場限りの優しさであるのに対して、セルフ・コンパッションは本当にその人を成長させる優しさであるという点が違います。

例えば糖尿病を患っているおばあちゃんが「あんぱんを食べたい」と言ったときに、あんぱんを買ってあげてしまうのが甘やかしの優しさであり、「今は無理だから甘い匂いのする紅茶でも飲もうか」と励ますのがセルフ・コンパッションの優しさです。

また、セルフ・コンパッションには陰と陽があると言われています。陰の方は寄り添う優しさ、陽は一緒に乗り越えようと励ますような優しさ。その両方が合わさっているものがセルフ・コンパッションの優しさなのです。

3つの要素をバランスよく育んでいくことで、セルフ・コンパッションが育っていく

セルフハグをしている女性

セルフ・コンパッションの第一人者であるクリスティン・ネフ博士は、セルフ・コンパッションの中核要素として、以下の3つの要素を提唱しています。

〈セルフ・コンパッションを構成する3つの要素〉

1.マインドフルネス

まず、そもそも「自分が辛い思いをしている」ということに気付けないと、自分に優しくすることもできません。マインドフルネスはその気づきのために必要な要素です。

2.セルフカインドネス

1で気づいた辛い状況にある自分を責めるのではなく、そんなときこそ優しさを自分に向けてみることが大切です。

3.共通の人間性(Common humanity)

「自分は不十分である、自分なんてポンコツだ」と自分を責めてしまっているときは、視野がすごく狭くなっているもの。でも、よく考えると完璧な人なんてこの世に一人もいないわけです。失敗したときは「自分がダメだからではなくて、人間だから失敗したんだ」と考えると、自分に対する攻撃性が和らぐと同時に、孤立した状態から抜け出すことができるようになります。相田みつおさんの「人間だもの」という言葉を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

以上の3つの要素をバランスよく育んでいくと、本質的なセルフ・コンパッションが育っていきます。そしてセルフ・コンパッションが育っていくことが、他者への慈しみにも繋がっていきます。

セルフ・コンパッションを育むために今すぐ実践できる方法を紹介

ベッドの上で開いたノートとコーヒーの写真

セルフ・コンパッションを育むための一番シンプルな方法としてよくおすすめしているのが、「マイクロストレスを感じたときに、友達に接するように自分自身に接する」ことです。

マイクロストレスとは、例えば「コーヒーをうっかりこぼしてしまった」というような、日常生活の中で見過ごしてしまいそうな、とても些細なストレスのこと。つい「もう私ってほんとバカ!」なんて言ってしまいそうなとき、友達に言うように「大丈夫?熱くなかった?また淹れ直せばいいよ」と自分自身に声をかけてみましょう。シンプルですが、とても効果的な方法です。

また、何かストレスを感じたとき自分の体に優しく触れたりセルフハグをしたりする、「スージングタッチ」もおすすめです。自分を安心させ、落ち着かせることができます。

このように日常生活の中で自分に対して優しく声がけをしていくこと、書籍や講座などを通してセルフ・コンパッションの理論をきちんと学ぶこと、この両方からのアプローチがセルフ・コンパッションを育むための近道と言えます。

自分をつい責めてしまいがちな方は、ぜひセルフ・コンパッションの考え方を取り入れてみてください。


MELONではMELONオンラインというオンライン・マインドフルネスサービスを提供しています。今回の記事でご紹介した「セルフ・コンパッション」を構成する要素のひとつであるマインドフルネス。マインドフルネス初心者の方、一人だと継続できない方、やり方が正しいのか不安な方も、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが丁寧に分かりやすくレッスンを行うので安心です。
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