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【エビデンスあり】マインドフルネス瞑想の効果を「脳科学的な観点から」徹底解説!

脳が空中に浮かんでいる画像

マインドフルネスは脳科学的にその効果が実証されています。しかし、脳内の何がどのように変化しているのかという点について詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか?

MELONオンラインでは、過去に「マインドフルネス瞑想で脳に起こる変化について」のスペシャルクラスが開催されました。講師は早稲田大学でマインドフルネスを研究されている髙橋先生で、今回の記事はクラス内容を文章化したものになっております。

なかなか触れる機会のない専門的な話を分かりやすく噛み砕いており、瞑想に対するモチベーションがぐっと高まること間違いなしです。ぜひ最後まで読んでみて下さいね!

脳の基本的な役割と、脳画像の見方

MRIと色がついた脳の画像
高橋先生スペシャルクラスのスライドより7ページを引用

脳の役割は、ざっくりと定義すると「外界を把握し、それに対してどのように行動をとるかを決める機関」になります。

例えば賑やかな社交の場があったとして、ある人は「楽しそうだ」と近づいていき、ある人は「自分はやめておこうかな」と距離を取るかもしれません。この行動の違いがどこから生まれているかというと、紛れもなく脳なのです。

皆さんは脳のMRIを撮ったことがあるでしょうか?ない場合でも、テレビドラマなどで脳が輪切りになったような画像を目にしたことがあると思います。一般的にこの脳画像は白黒なのですが、特殊な撮り方をすると活性化している部分に色がついた画像を撮ることができます。

「活性化」とは脳の細胞が電気信号を送り、そこに血流が一気に集まることを指します。つまり脳画像で色がついている部分は、血流が多い部分ということになります。

呼吸瞑想を行っている時の脳の動きを解説

呼吸瞑想とそのフェーズについて

呼吸瞑想の4つのフェーズを示した図
高橋先生スペシャルクラスのスライドより12ページを引用

マインドフルネス瞑想は寝転がりながらでも実践できます。実際の研究現場では、MRIに寝転びながら入り、瞑想中の脳の様子を撮影します。ここで一度、ベーシックな瞑想方法である「呼吸瞑想」の流れを振り返ってみます。呼吸瞑想は

1. 呼吸に意識を向ける(呼吸への気づき)
2. ぼーっと考えが勝手に浮かび始める(心のさまよい)
3. 考えていること自体に気付く(さまよいへの気づき)
4. 意識を呼吸に戻す(注意の転換)


という4つのサイクルを繰り返しています。実は脳科学の研究において、この4つのフェーズそれぞれの脳活動が明らかになっているのです。

ぼーっと考えている時の脳活動

脳内引きこもりネットワークが働いている時の脳を示した画像
高橋先生スペシャルクラスのスライドより13ページを引用

呼吸瞑想の2番目のフェーズである「ぼーっと考えが勝手に浮かび始める」際に働いているのは、脳の後部帯状回や内側前頭前野です。この部分を情報が行ったり来たりすることによって、「ぼーっと考えている状態=デフォルトモードネットワーク」が生まれているのです。

このデフォルトモードネットワークは安静にしている時でも過去や未来についての思考を絶えず繰り返しています。分かりやすくするために以後は「脳内引きこもりネットワーク」と呼びます。

脳内引きこもりネットワークはうつ病や気分の落ち込みに大きく関係しています。落ち込んでしまって何もやる気が起きない・何もできないという場合には、このネットワークが過剰に活動している可能性があります。この状態では「目の前のことに目を向けよう」と言われても、心ここにあらずの状態になってしまいます。

引きこもり思考に気づいた時の脳活動

気づきネットワークが働いている時の脳の様子を示した画像
高橋先生スペシャルクラスのスライドより16ページを引用

呼吸瞑想の3番目のフェーズである「考えていること自体に気付く」際に働いているのは、脳の島(とう)と呼ばれる部位です。島は目立つものにハッと気づくときに活動する顕著性ネットワークを構築しており、これを以後「気づきネットワーク」と呼びます。

実はこの気づきネットワークこそが、脳内引きこもりネットワークから脱却するためのスイッチになっているのです。そして驚くべきことに、うつ病の患者さんはこの島自体の面積が小さいことが研究で分かっています。つまり「引きこもりネットワーク」ばかりが強化されてしまい、抜け出すスイッチである「気づきネットワーク」は弱まってしまっているということです。

呼吸に意識を向けている時の脳活動

注意制御ネットワークが働いている時の脳の様子を示した画像
高橋先生スペシャルクラスのスライドより18ページを引用

呼吸瞑想の1番目と4番目のフェーズである「呼吸に意識を向ける」際に働いているのは、脳の後頭部頂葉と右背外側前頭前野です。この部分は注意を転換して何かに向け続ける役割を担っており、特に前頭前野に関しては意思決定に大きく関与しています。これを以降「注意制御ネットワーク」と呼びます。

うつ病の患者さんは背外側前頭前野の機能が低下し、何かに集中できなくなってしまうことがあります。これはとても辛い症状ですが、裏を返せば瞑想で改善する可能性があるということです。

呼吸瞑想で鍛えていることは何か

男女2人が筋トレを行っている様子の画像

ここまでの流れを振り返り、呼吸瞑想によって鍛えているものは何かという点について考えてみます。呼吸瞑想では「脳内引きこもり状態に気づき、今ここの呼吸に戻って、呼吸に気づき続ける」という作業を行っています。

これはすなわち過剰に働いている脳内引きこもりネットワークを弱め、気づきネットワークと注意制御ネットワークを鍛えているということになります。気づきネットワークと注意制御ネットワークを鍛えると、自分の周りの世界をより正確に認識できるようになり、それに対する行動選択を自由に行うことができるようになります。

瞑想を継続した場合の脳の変化とは

瞑想実践者の脳がどのように変化するかを示した画像
高橋先生スペシャルクラスのスライドより21ページを引用

ここからは瞑想「中」の脳の動きではなく、瞑想を継続した場合の長期的な変化を見ていきます。9年程の継続的な瞑想実践者と非実践者を比較したところ、実践者は気付きネットワークの中核部位である島と前頭前野の一部が分厚くなっていたという研究結果があります。

この結果は300人規模のメタ解析でも裏付けられているため、一部の人の脳にのみ起こることではなく、瞑想を継続すれば誰にでも起こりうることです。メタ解析の対象になった人は40代〜50代が大半だったため、「若くないと脳の変化が現れない」といったこともありません。

マインドフルネスによって脳に起こる効果|まとめ

パズルの中に脳が描かれている画像

本記事では「瞑想の最中・瞑想を継続した場合」に脳にどのような変化が起きているのかを掘り下げてご紹介しました。少し難しい部分もありましたが「脳内引きこもりネットワーク・気づきネットワーク・注意制御ネットワーク」という3つの概念と「瞑想で鍛えていることは何か」という点が大まかに理解して頂けたと思います。

高橋先生はクラスの最後に「毎日の気づきが、脳を、自分を変えることに繋がっています」とお話して下さりました。マインドフルネスを継続し、心を世界に対してオープンな状態にしていきましょう。

マインドフルネスをを継続したいけれどなかなか1人では難しい方には、MELONが提供する「MELONオンライン」というオンライン・マインドフルネスサービスがおすすめです。

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MELONオンラインの画像

講師紹介:髙橋 徹さん

公認心理師・臨床心理士、博士(人間科学)

東京大学教育学部卒業後、早稲田大学大学院でマインドフルネス研究の第一人者である熊野宏昭教授の指導のもと、マインドフルネスのメカニズム研究に従事。日本学術振興会特別研究員を経て、早稲田大学人間科学学術院助教として、マインドフルネスの研究・教育に携わっている。専門は心理学・脳科学。Biopsychosocial medicine、 Psychological reports、 Journal of cognitive psychotherapyなど国際的な学術誌で、マインドフルネスの効果やメカニズムに関する研究成果を多数発表。日本マインドフルネス学会優秀ポスター発表賞(2018年)、日本健康心理学会アーリーキャリアヘルスサイコロジスト賞(2019年)、早稲田大学小野梓記念賞(2021年)受賞。