瞑想中に脳で何が起きている?マインドフルネス瞑想の効果を脳科学者が解説!
瞑想を継続することで脳に変化を起こし、うつやストレスの解消に効果があることが科学的に実証されています。
しかし、脳内の何がどのように変化しているのかを詳しく知らないという方は多いのではないでしょうか?
そこで今回は、MELONオンラインで行われたスペシャルクラス「マインドフルネス瞑想で脳に起こる変化について」をもとに、マインドフルネス瞑想と脳との関係を紹介します。
MELONのアドバイザーで脳科学者の髙橋徹さんの講義を、専門的ながらもわかりやすく解説していきます。
「マインドフルネスとは? 〜 マインドフルネスの全てを体系的に解説 〜」を読んでから記事をご覧いただくと、より理解が深まります。
瞑想で脳が活性化する!呼吸瞑想の仕組み
そもそも脳はどのような役割を担い、どのような行動の違いを生むのでしょうか。ここでは、脳画像の見方に触れつつ説明します。さらに脳を活性化させる呼吸瞑想の仕組みもみていきましょう
脳の基本的な役割と、脳画像の見方
脳の基本的な役割は「外界を把握し、それに対してどのような行動を取るか決定する器官」です。
たとえば、賑やかな社交の場に対して「楽しそうだ」と近づくか、「苦手だな」と距離を取るかなど同じ状況であっても行動は人によって異なります。この違いは脳によって生まれるのです。
皆さんはテレビや映画などで脳が輪切りになったような画像を見たことがあるでしょうか?それが脳のMRIで、たとえば画像の右下にあるような写真です。
MRIで特殊な撮り方をすると活性化した部分に色がつきます。活性化とは脳の細胞が電気信号を送り、そこに血流が一気に集まることで、色がより赤い部分は血流が多いことを示しています。
呼吸瞑想中に脳がどう変化したかを観察し、瞑想と脳の関係を明らかにしたところ、瞑想によって血流が多くなり、脳が活性化したことがわかりました。
呼吸瞑想は4つのサイクルを繰り返して行う
ここで、瞑想と脳との関係を観察した際に用いた「呼吸瞑想」を紹介します。基本的な呼吸瞑想は以下の4つのフェーズによって構成されており、瞑想中はこのサイクルを繰り返し行います。
- 呼吸に意識を向ける(呼吸への気づき)
- ぼーっと考えが勝手に浮かび始める(心のさまよい)
- 考えていること自体に気付く(さまよいへの気づき)
- 意識を呼吸に戻す(注意の転換)
呼吸瞑想中の脳の様子をMRIで撮影したところ、脳は4つのフェーズで異なる活動をしていることが、画像診断によって明らかになりました。
呼吸瞑想の際に脳で起きていることは?
それでは瞑想中の各フェーズにおいて、「脳のどの部位がどのように働いているのか」について「うつ病のときの脳はどうなっているのか」を例に解説していきます。
呼吸に意識を向けている時の脳活動|注意制御ネットワーク
呼吸瞑想の1番目と4番目のフェーズである「呼吸に意識を向ける」際に働いているのは、脳の後頭部頂葉と右背外側前頭前野です。この部分は注意を転換して何かに向け続ける役割を担っており、特に前頭前野に関しては意思決定に大きく関与しています。これを以降「注意制御ネットワーク」と呼びます。
うつ病を患うと、背外側前頭前野の機能が低下し、何かに集中することが難しくなることがあります。これはとてもつらい症状ですが、裏を返せば瞑想で改善する可能性があるということです。
ぼーっと考えている時の脳活動|脳内引きこもりネットワーク
呼吸瞑想の2番目のフェーズである「ぼーっと考えが勝手に浮かび始める」際に働いているのは、脳の後部帯状回や内側前頭前野です。この2か所がネットワークを形成し、活性化することによって、「ぼーっと考えている状態=デフォルトモードネットワーク」が生まれています。
このデフォルトモードネットワークは、安静にしているときでも過去や未来・自分についての思考を絶えず繰り返しています。これを以降「脳内引きこもりネットワーク」と呼びます。
脳内引きこもりネットワークは、うつ病や気分の落ち込みに大きく関係しています。落ち込んでしまって何もやる気が起きない・何もできないという場合には、このネットワークが過剰に活動している可能性があります。
この状態では「目の前のことに目を向けよう」と言われても、心ここにあらずの状態になってしまいます。
後部帯状回と内側前頭前野は、瞑想を実践していない人に比べ実践している人の方が活性が低くなります。これにより瞑想実践者は脳内引きこもりネットワークから脱しやすくなるのです。
デフォルトモードネットワークについてはこちらの記事にも詳しく解説されています。
参考 :“Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity”. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America vol. 108,50
考えていること自体に気づいた時の脳活動|気づきネットワーク
呼吸瞑想の3番目のフェーズである「考えていること自体に気付く」際に働いているのは、脳の島(とう)と呼ばれる部位です。島は目立つものにハッと気づくときに活動する顕著性ネットワークを構築しており、これを以後「気づきネットワーク」と呼びます。
実はこの気づきネットワークこそが、脳内引きこもりネットワークから脱却するためのスイッチになっているのです。そして驚くべきことに、うつ病の患者さんはこの島自体の面積が小さいことが研究で分かっています。
つまり「引きこもりネットワーク」ばかりが強化されてしまい、抜け出すスイッチである「気づきネットワーク」は弱まってしまっているということです。
呼吸瞑想によって自分の周りの世界をより正確に認識できる
呼吸瞑想によって、過剰に働いている「脳内引きこもりネットワーク」を抑制し、「気づきネットワーク」と「注意制御ネットワーク」を鍛えることができます。
呼吸に集中しようとすることで、過去の後悔や未来の不安などの思考が湧き上がってくる状態に気がつき、代わりに呼吸に注意を向けることで集中力を養うのです。この訓練により、自分や周囲の状況を正確に認識し、自由な行動を選択できるようになります。
継続的な瞑想で「島」と「前頭前野」の一部が分厚くなる
瞑想を継続すると、脳はどのように変化するのでしょうか。
「気づきネットワーク」の解説のとおり、うつ病患者の脳は島の部分が小さくなっていることがわかっています。ところが、9年程の継続的な瞑想実践者と非実践者を比較したところ、実践者は気付きネットワークの中核部位である島と前頭前野の一部が分厚くなっていたことが研究によって判明しました。
この結果は300人規模のメタ解析でも裏付けられているため、一部の人の脳にのみ起こることではなく、瞑想を継続すれば誰にでも起こりうることです。メタ解析の対象になった人の平均は40歳程度だったため、「若くないと脳の変化が現れない」といったこともありません。
マインドフルネス瞑想を継続するコツとは
マインドフルネス瞑想は継続することで効果が高まります。習慣化するコツは、
・日常の行動と組み合わせる
・コミュニティに参加する
・専門家の指導を受ける
の3つです。それぞれの解説やポイントはこちらの記事でご確認ください!
継続に自信がない人はMELONオンラインがおすすめ
「マインドフルネスを試したけれど1人だと続かなかった」「やり方やポイントがわからない」という方は、「MELONオンライン」のマインドフルネスクラスを受講するのがおすすめ。
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まとめ|マインドフルネスによって脳に起こる変化
今回は、呼吸瞑想が脳の働きを変化させる仕組みについて詳しくご紹介しました。
呼吸瞑想によって脳内引きこもりネットワークを抑制し、気づきネットワークや注意制御ネットワークを鍛えることができます。これによってぐるぐると思考が巡ってしまう状態から脱して自分や周囲の状況を正確に認識し、行動を自由に選択できるようになるのです。
呼吸瞑想は継続することで脳の変化を起こし、うつや不安・ストレスに効果を発揮します。ご紹介した継続するコツを参考にぜひ習慣にしてみてくださいね。