『マインドフルネス』は不安障害に効果がある？研究結果を元に解説！
「高橋徹先生」監修によるマインドフルネスに関する研究や論文の連載コラムです。
今回のテーマは「マインドフルネスと不安障害」についてです。医大に通うインターンのShoichiが担当します。
マインドフルネス瞑想は心の病気に対しても効果があるのでしょうか？ご覧ください。
髙橋 徹
MELONアドバイザー
早稲田大学人間科学学術院助教
公認心理師・臨床心理士
東京大学教育学部卒業後、早稲田大学大学院でマインドフルネス研究の第一人者である熊野宏昭教授の指導のもと、マインドフルネスのメカニズム研究に従事。日本学術振興会特別研究員を経て、早稲田大学人間科学学術院助教として、マインドフルネスの研究・教育に携わっている。専門は心理学・脳科学。Biopsychosocial medicine、 Psychological reports、 Journal of cognitive psychotherapyなど国際的な学術誌で、マインドフルネスの効果やメカニズムに関する研究成果を多数発表。日本マインドフルネス学会優秀ポスター発表賞（2018年）、日本健康心理学会アーリーキャリアヘルスサイコロジスト賞（2019年）、早稲田大学小野梓記念賞（2021年）受賞。
医療にも応用されるマインドフルネス
マインドフルネスは「今、ここに意識を集中する」ことによって、心と脳を休ませる瞑想法です。それで何か変わるの？と思われる方も多いかもしれませんが、日常生活でのストレスの軽減、医療現場におけるうつ病治療など多くの場面で、マインドフルネスはエビデンスに基づき利用されています。
今回、紹介する論文は不安障害の治療において、マインドフルネスが薬の治療と同じくらい治療効果があるかを検証した初めての臨床試験です。
Elizabeth A. Hoge, MD; Eric Bui, MD, PhD; Mihriye Mete, PhD; et al. Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry. 2023;80(1):13-21. doi:10.1001/jamapsychiatry.2022.3679
タイトル翻訳「成人の不安障害の治療におけるMBSR(マインドフルネスストレス低減法)とエスシタプラムの比較（ランダム化比較試験)」
不安障害とは？
不安障害は過度の恐怖や不安に関連し、行動や日常の生活に支障が出る症状を指します。
日本人が一生のうちに不安障害になる確率は4.2％で、不安障害はアルコール乱用、うつ病に次ぐ身近な精神疾患です。
そういった意味で誰でもすぐに実践できるマインドフルネスが治療に有効かを検証するこの試験には重要な意義があると言えます。
薬よりも有害事象が少ないマインドフルネス
今回の試験では276名の不安障害の成人患者を対象にMBSR(マインドフルネスストレス低減法)*のグループと薬物治療(抗うつ薬のエスシタプロラム服用)のグループに分け比較することで、MBSRの治療効果が検証されました。
評価判定はGCS-Iという重症度評価(１点が正常、7点が最重症)が用いられました。結果としてGCS-Iスコアが８週間でMBSRグループは1.35点、薬物治療グループは1.43点減少し、統計的に不安障害の治療においてMBSRは薬物治療と同等の治療効果があることが示されました。
また注目する点としてMBSRは有害事象が少ないことがあげられます。薬物治療グループでは8%が有害事象**のため治療から離脱したのに対して、MBSRグループでの有害事象による離脱率は0%でした。さらに、薬物治療では78.6%の人に不眠、吐き気などの有害事象が生じたのに対して、MBSRグループでの有害事象は不安感の増大などの15.4%に留まりました。
*MBSRとは？
MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)はマサチューセッツ大学メディカルセンターのJohn Kabat-Zinn博士によって開発されたマインドフルネスを用いた８週間の集中トレーニングです
医療から教育まで確立された方法として様々な現場で利用されています。
MELON OnlineではMBSRのエッセンスを実践できる一般の方でも参加しやすい30分のクラスMBSR miniを毎週火曜日 21:00~ 開催しているので、興味がある方は是非参加してみてください！
**有害事象
投薬や処置で起こる健康上の問題のことを指します。治療と問題に因果関係が有るか無いかは問いません。
まとめ
この記事では不安障害に対してマインドフルネスが有効かを調べた研究結果を報告しました。
結果として、マインドフルネスを応用した治療法MBSRは不安障害に対して、薬物治療と同程度の治療効果があることがわかりました。またMBSRは薬物治療に比べて有害事象・治療の離脱率が低いことが示されました。
マインドフルネスが医療現場で利用される場面もこれから増えてくるかもしれないですね。
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