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『HSP』とは?特徴や原因、向き合い方を簡単に解説!

手のひらの上に植物が載っているイラスト

最近、「HSP」という言葉をよく耳や目にするようになってきました。

HSPとはHighly Sensitive Personの頭文字をとった言葉で、「生まれつき刺激に敏感な特性を持つ人」のことを言います。日本では「敏感さん」などといった言われ方で知っている人も多いかもしれませんね。

しかし、広く一般に知られるようになったからこそ、誤解や間違った情報も広まっているようです。

そこでこの記事では、HSPとは何か、HSPの人の特徴、症状、原因などを心理学の学術的な背景を元にして解説していきます。

また、「自分はHSPに当てはまる」「身近な人がそうかも」というときのために、その向き合い方についても述べていくので、ぜひ参考にしてください。

HSPとは?意味を簡単に解説

ハートのオブジェクト

HSPとは「生まれつき刺激に敏感な特性を持つ人」のこと

HSPとは、「生まれつき刺激に敏感な特性を持つ人」を指します。

しかし、これは一般の方にも理解しやすいように、かなりかみ砕いた説明と言えるものです。

HSPの提唱者であるアメリカの心理学者エレイン・アーロン氏は、HSPを「『環境感受性』が非常に高い人たちを表すラベルである」と考えています。

環境感受性とは、影響の受けやすさです。環境感受性は誰にでも備わっていますが、この特性が特別顕著な人を「HSP」とカテゴライズしているのです。

例えるなら、「身長が2mを超えた人たちだけを特別な呼び方にして区別しよう」と言っているのと変わりはありません。HSPとそうではない人が質的に異なるわけではなく、量の差なのです。

必ずしもHSPが「生きづらさの原因」ではない

日本ではHSPが「生きづらさの原因」かのように捉えられることがありますが、必ずしもそうではありません。

HSPの方は、ポジティブな刺激にもネガティブな刺激にも、そうではない人以上に反応します。

自分に合った環境に身を置けば、HSPの特徴を持つ人の方が、むしろ活き活きと自分らしさを発揮できる可能性があるのです。

事実、良い子供時代を過ごしたHSPの方は、ポジティブな刺激に対して強く反応することが実験を通じてわかっています。

なお、HSPの方は「人種や性別に関わらずどの国にも一定の割合でいる」と考えられています。

参考文献・論文:Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda

HSPになる原因は?遺伝や環境との関係を解説

ハートのオブジェクトを手のひらに乗せている様子

HSPの原因は「遺伝子が50%・環境が50%」の半分ずつ

HSPの原因を大雑把にまとめると、遺伝子が50%、環境が50%と半分ずつになります。

HSPはよく「遺伝子的に生まれつき備わったもの」と言われるていますが、2,000人を超える一卵性の双子を対象にした研究によって、遺伝による影響は約50%であることがわかっているのです。

つまり、親が環境感受性の非常に高い人であったとしても、必ずしも子どももそうなるとは限らないのです。

一方、残りの50%は環境的な要因で、特に幼少期の成育環境がHSPの気質が発露するか否かにとって、とても大事な要因となってきます。

例え親から環境感受性の高さにつながる遺伝子を引き継いだとしても、その性質を強化するも完全に消し去るも環境次第なのです。

HSPの特徴をもつ子ども=『HSC(Highly Sensitive Child)』

HSPの特徴をもつ子どもをHSC(Highly Sensitive Child)と言いますが、HSCはその特徴から些細なことで大泣きをしてしまうかもしれません。すると親がそれに対して強く反応し、またHSCが過敏に反応する…。

このような経験が蓄積されることでHSPの気質が発露すると考えられるのです。

このように、HSPは必ずしも先天的(生まれつき)の特性ではなく、生まれつきの感受性と成育環境とが絡み合って、徐々に形成されていくと考えられています。

HSPの特徴とは?「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性を紹介

花の入った小さな花瓶を手で持っている様子

では、HSPの人はどのような特徴があるのでしょうか。

HSPの提唱者アーロン氏によれば、HSPは「DOES(ダズ)」と呼ばれる4つの特性を有しているとのことです。

先述の「環境感受性」をより細分化したものと考えるとわかりやすいでしょう。

DOESは以下に述べる特徴の頭文字を取ったものです。

一つずつ順番にみていきましょう。

参考文献:エレイン・N・アーロン.「敏感すぎる私の活かし方」.パンローリング株式会社, 2020,418

① Depth of processing

DOESの一つ目はDepth of processinの特徴のことで、「情報をより深く処理する」といった意味になります。

この特徴が強く表れる人は、そうではない人に比べて「意識の座」として知られる脳の島皮質が活性化していることがわかっており、指さし確認をするように一つ一つのことを納得するまで考え続ける傾向があります。

そのため、物事を始めるまでに時間がかかり、一度に複数の問題や情報を処理することが苦手です。また、考えすぎるのでかなり「深読み」をしてしまうこともあります。

しかし、命のリスクがあるような現場では、この「深く考えすぎる」特徴は非常に有効です。

② Overstimulation

DOESの二つ目はOverstimulationの特徴のことで、「刺激を受けたときに圧倒されやすい」といった意味になります。

この特徴が強く表れる人は、大きな音が苦手であったり、人の些細な言動がずっと心に引っかかったりします。

また、服についているタグもチクチクして気になるという人もいるようです。

アーロン氏によればOverstimulationがDOESのなかで唯一ネガティブな特徴とのことですが、この特徴を活かせないわけではありません。

例えば、「感受性が豊かである」ということでもあるので、芸術作品などに対する感動は人一倍強いと言えます。

③ Empathy and emotional responsiveness

DOESの三つ目はEmpathy and emotional responsivenessの特徴のことで、「共感力が高く感情の反応が強い」といった意味になります。

この特徴が強く表れる人は、他人が怒られているのを見るとあたかも自分も怒られているかのように感じたり、言葉にせずとも他人の表情、声音、目線などからその人が何を考え、何を感じているのかをくみ取れたりします。

ネガティブな感情に対しては自分もネガティブになってしまいますが、ポジティブな感情であれば自分もポジティブな気分になるのです。

④ Sensitivity to subtleties

DOESの四つ目はSensitivity to subtletiesの特徴のことで、「わずかな刺激や変化にも気づくことができる」といった意味になります。

この特徴が強く表れる人は、些細な味や音の変化などを敏感に察知することができます。他の人が気づけないことにも気づけるため、他人に変化を伝えてもなかなか理解されない可能性もあります。

しかし、わずかな違いが結果的に大きな違いを生み出すような料理や音楽の領域では非常に大きな力となるでしょう。

HSPの人にはどんな症状がある?

自然の中にハートのオブジェクトが置かれている

HSPの人の症状として、よく「吐き気」「人混みが苦手」「騒音が苦手」「多汗」「自己肯定感が低い」など、マイナスの側面が強調されているのを見聞きしたことがあるかと思います。

しかし、HSPは本来「『環境感受性』が非常に高い人たちを表すラベル」であり、環境との相互作用によって表れる症状は異なるのです。

従って、「HSPだから人混みが苦手」などと一元論的に考えることはできません

同様に、HSPの人の長所として「人の気持ちに寄り添える」「想像力豊か」「危機管理能力が高い」などが挙げられますが、強みが発揮できるかどうかはやはりHSPの気質と環境との相互作用によります。

従って、「HSPだからこんなことが得意」などと特定させることはできないのです。

HSPとの向き合い方とは?3つのケースごとに解説

HSPと書かれたハートのオブジェクト

HSPは「『環境感受性』が非常に高い人たちを表すラベル」であり、もし「生きづらい」と感じているのであれば、それはHSPの気質が原因ではなく、HSPの気質と環境との相互作用に不和が生じているサインです。

人によって表れるサインは異なるでしょうが、不和が生じたときに表れる典型的なサインとその向き合い方をいくつか考えていきたいと思います。

ケース1「悪い人じゃないんだけど、あの人といると疲れる…」

一緒にいて疲れるといったサインを感じ取ったら、その人とあなたは相性が合っていない可能性が高いです。

例え「悪い人じゃないんだけど」という人であっても、無理して「付き合わなきゃ」と感じる必要はありません

例えば「正論を言ってくれてありがたいんだけど、どこかそこに皮肉が混じっている」などといった言い方をする人は、親切で言ってくれていたとしてもやはり一緒にいると疲れてしまいますよね。

HSPの気質を持っていればなおのこと。

そういう人から何か正論を言われても「そうですね、善処します」などと当たり障りなくやり過ごすことをおすすめします。無理して自分から積極的にかかわろうとする必要はないのです。

ケース2「混雑したスーパーに行ったから料理する気力がない…」

せっかく料理をするための食材を買いに行ったとしても、人混みなどで疲れてしまったのなら無理して料理をする必要はないでしょう。

そういうときはデリバリーでも全く問題ありません。気持ちが疲れているときに刃物や火を扱うと怪我や事故のリスクが高いですし、せっかく料理をしてもおいしく楽しく食べられないかもしれませんよね。

そのため、無理して料理をしようとせずに、買ってきた食材は冷蔵庫にしまって後日使うようにしましょう。

もし事情を理解してくれる人がいれば、代わりに作ってもらうか手伝ってもらってもいいかもしれません。いずれにせよ、「せっかく買ったのだから」と無理することだけは控えていただければ嬉しいです。

ケース3「周りの音が気になる…」

他の人は気にならないレベルの音でもHPSの気質があるとすごく気になってしまうこともあります。

そんなときはノイズキャンセリング機能がついたイヤホンがおすすめです。最近のノイズキャンセリング機能がついたイヤホンは、雑音はカットするものの人の声などは聞こえるなど、安全性に配慮したものもあります。とはいえ比較的高額なので、効能は落ちてしまいますが耳栓などでも代替は可能です。

また、音に関わらず、光、匂いなどが気にある場合はサングラスやマスクをするのも有効です。

中には「マスクは臭いが多少はまぎれるかもしれないけど、肌に触れる感覚が気になる」という方もいらっしゃるでしょう。

その場合は、お気に入りの香水などのフレグランスを持ち歩き、いつでも嗅ぐことができる手の甲などに一振りするとよいでしょう。それが苦手な臭いをマスキングしてくれます。

このように、HSPは環境との相互作用によって苦手なにおいはことさら苦手に感じますが、好きなにおいであればより心地よく感じることができるのです。

HSPには『マインドフルネス』も効果的

女性がマインドフルネス瞑想をしている様子

HSPによる生きづらさを緩和するには、『マインドフルネス』も効果的と言われています。

マインドフルネスとは、「今この瞬間の経験を評価や判断せずに気づきつづけること」です。

マインドフルネスを実践することで「自分が今何を感じ、どんなことがつらいのか」に気づけるようになります。

その結果、思考や感情から距離をとれるようになり、HSPのつらさの緩和にもつながるのです。

以下の記事では、『HSPにマインドフルネスな効果的な理由』をさらに詳しく解説しており、さらに『簡単に今すぐ実践できるマインドフルネスのやり方』も動画付きで紹介しているので、ぜひご覧ください!

まとめ

最近よく見聞きするようになったHSPについて学術的な視点から解説していきました。

広く認知されるようになったことでHSPへの理解が広まった反面、わかりやすさを優先して学術的には妥当ではない解説もしばしば目にするようになりました。

その一つが「HSPは生きづらさの原因」です。

しかし、HSPはあくまでも「『環境感受性』が非常に高い人たちを表すラベル」。HSPがあるからといって生きやすい、生きづらいといったことにはなりません。あくまでもHSPと環境との相互作用によって決まるものなのです。

「自分はHSPかも」と思う方が同時に「生きづらい」とも感じているのであれば、環境があなたには適していないサインかもしれません。

ぜひ何かしらの工夫をして環境に適応したり、環境そのものを変えてしまったりして、ご自身のHSPの気質と上手に付き合っていただければと思います。自分に優しく、自分を大事にしていってくださいね。


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