マインドフルネスの科学的エビデンス【効果の研究・論文紹介】

近年マインドフルネスに対する関心は高まり続けています。皆さんも、「マインドフルネス・瞑想」をどこかで聞いたことがあると思います。
ただ、効果があるのか?というところが皆さん気になるところではないでしょうか?
近年マインドフルネスは様々な研究が行われており、効果に関する研究結果・エビデンスが発表されています。マインドフルネスは、実践してすぐ効果が出る万能薬ではないですが (薬でさえ万能でないですが) 、効果を理解しておくと実感も早いと思います。
この記事では、「マインドフルネスに関連する治療や介入の効果の研究結果・エビデンス」をご紹介します。
マインドフルネス・瞑想の効果は?

そもそもマインドフルネスとは?
まずはマインドフルネスの定義をおさらいしてみましょう。
マインドフルネスとは「今この瞬間の経験に、評価や判断をせずに意識的に注意を向けることにより現われる気づき」です。普段は意識していない自らの感情や思考を意識化し、刺激と反応の間に「隙間」を作ることで、様々な効果を実感できるようになります。
マインドフルネス・瞑想の具体的な効果
マインドフルネスの効果は大きく分けると4つあると言われています。
- 集中力の向上
- 感情調整力の向上
- 自己認識能力の向上
- 自己統制能力の向上
また、効果を具体的に、また間接的な効果も含めると以下の効果があると言われています。
- ストレスに対する回復力の向上 (レジリエンス・折れない心・しなやかな心)
- 仕事のパフォーマンスの向上 (集中力・注意力・記憶力・判断力・創造力)
- 睡眠の質の向上 (不眠・寝つき)
- 感情調整力の向上 (不安・落ち込み・怒り・恐怖・自己嫌悪)
- 自己認識への変化 (思考ループの抑制・落ち着き・欲望コントロール)
- 他人を思いやる慈愛心・チームワーク力の向上
- 心の知能指数であるEQの向上
- 免疫機能の改善 (自律神経・皮膚疾患・痛み・肩こり)
- その他 (禁煙・ダイエットなど)
マインドフルネスでこんなに様々な効果があるのかと驚きかもしれません。この後、いくつかの効果に関する研究論文・エビデンスを交えてご紹介します。
マインドフルネスストレス低減法 (MBSR) と認知療法の研究・エビデンス

この分野の研究は直近の10年ほどの間に急増してきています。特に、現在広く普及しているマインドフルネス・ストレス低減法 (Mindfulness-Based Stress Reduction, MBSR) とマインドフルネス認知療法 (Mindfulness-Based Cognitive Therapy, MBCT) に関して、数多くの研究がなされ、多くのエビデンスが発見されています。
これらの研究結果をまとめたメタアナリシス (複数の独立した研究結果を統合して、より高い見地から検討する統計的分析手法) についていくつかご紹介したいと思います。
うつ病とマインドフルネスに関する研究論文・エビデンス
2015年にClarkeらはうつ病の再発防止に関するメタアナリシスの研究を発表しました。
この分析は29の論文と、それらの研究に参加した2,742人が対象となりました。結論としては、MBCTを含む複数の認知療法を受けたグループは、12ヶ月後におけるうつ病の症状の再発リスクが22%減少していました。この結論は、多くの研究結果を統合した分析であり、マインドフルネスによる効果は科学的に認められたと言うことができそうです。
>>参考文献・論文 : Katherine Clarke (2015). Can non-pharmacological interventions prevent relapse in adults who have recovered from depression? A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Clinical Psychology Review, 39, 58-70.
慢性疼痛とマインドフルネスに関する研究論文・エビデンス
次に、2017年にHiltonらによって発表された慢性疼痛に関するメタアナリシスの研究をご紹介します。
755の研究から38をランダムに抽出し、3,536人を対象とした分析の結果、マインドフルネス瞑想を行ったグループは有意に慢性疼痛が緩和されていました。これらの研究に参加した患者さんは線維筋痛症、背部痛、関節リウマチなど様々な疾患による痛みに悩まされていた方々ですが、特に、うつ病の症状の緩和とQOL(生活の質)の向上に効果が見られました。
>>参考文献・論文 : Lara Hilton (2017). Mindfulness Meditation for Chronic Pain: Systematic Review and Meta-analysis. Annals of Behavioral Medicine, 51, 2, 19-213.
ストレスや不安とマインドフルネスに関する研究論文・エビデンス
最後に、2015年にKhouryらによって発表された、健常人を対象としたメタアナリシスの研究をご紹介します。
この分析ではMBSRに関する研究を含む676の論文から29件を抽出し、887名が対象となりました。この結果、マインドフルネス (MBSR) はストレス、うつ病、不安や苦痛を軽減し、健康な人の生活の質を改善するのに中程度の効果があることが確認されました。
まとめ
以上は近年発表されている多くの研究結果・エビデンスのほんの一部です。マインドフルネスが本当に有効なのかまだまだ懐疑的な方も多いと思いますが、ご理解のお手伝いになれば幸いです。
このブログでは、今後もマインドフルネスや瞑想の最新の研究結果・エビデンスをどんどんご紹介させて頂きます。ぜひご覧ください。
マインドフルネスの定義や歴史、効果ややり方・実践方法に関しては、こちらの記事をご覧ください。