研究・論文紹介

瞑想は他の人と一緒に行うことで脳波が強まる|研究結果を元に解説

複数人で瞑想をしている様子

「高橋徹先生」によるマインドフルネスに関する研究や論文の連載コラムです。第5回のテーマは「人と一緒に瞑想する時に強まる脳波」についてです。

マインドフルネス瞑想を「一人でするとき」と「他の人と一緒にするとき」では、脳波にどのような違いがあるのでしょうか。研究結果を元に詳しく解説されているので、ぜひ参考にしてください。

髙橋 徹

MELONアドバイザー

早稲田大学人間科学学術院助教

公認心理師・臨床心理士

東京大学教育学部卒業後、早稲田大学大学院でマインドフルネス研究の第一人者である熊野宏昭教授の指導のもと、マインドフルネスのメカニズム研究に従事。早稲田大学助教を経て、日本学術振興会海外特別研究員として、米国のLaureate Institute for Brain Researchでマインドフルネスの研究に携わっている。専門は心理学・脳科学。Biopsychosocial medicine、 Psychological reports、 Journal of cognitive psychotherapyなど国際的な学術誌で、マインドフルネスの効果やメカニズムに関する研究成果を多数発表。日本マインドフルネス学会優秀ポスター発表賞(2018年)、日本健康心理学会アーリーキャリアヘルスサイコロジスト賞(2019年)、早稲田大学小野梓記念賞(2021年)受賞。

人と一緒に瞑想することの意味

自然 瞑想 女性

マインドフルネス瞑想は、一人でもできますが、皆で集まって行うことも多いです。

これはインストラクターの先生に教わるためもありますが、それ以外に、人と一緒に瞑想することには何か意味があるのでしょうか?

それを明らかにするために、人と一緒に瞑想するときと、一人で瞑想するときの脳活動の違いを調べたのが、今回ご紹介する研究です。

紹介する論文:Matiz, A., Crescentini, C., Bergamasco, M., Budai, R., & Fabbro, F. (2021). Inter-brain co-activations during mindfulness meditation. Implications for devotional and clinical settings. Consciousness and cognition95, 103210.

タイトル邦訳「マインドフルネス瞑想中の脳の同時活性化:礼拝や臨床場面への示唆」

瞑想中の脳波測定実験

脳波 瞑想

この研究では、2人ペアで瞑想実践者32人(16ペア)を集めて、以下の4つの条件で脳波(※)を測定しました。

  1. 同じ部屋で呼吸瞑想をする条件
  2. 別の部屋で呼吸瞑想をする条件
  3. 同じ部屋でぼんやり考え事をする条件
  4. 別の部屋でぼんやり考え事をする条件

実験は、図1のような部屋で行われました。

瞑想 研究 部屋別 図1

瞑想条件では、呼吸に注意を向けて観察する、スタンダードな呼吸瞑想が行われました。

ぼんやり条件では、過去のことを思い出したり、未来のことを空想したりして、考え事をしてもらいました。

実験の結果、別の部屋の条件➁と比べて、同じ部屋で瞑想をする条件➀でだけ、強まる脳波があることがわかりました。

具体的には、ガンマ波というギザギザした高周波の脳波が、中部帯状回(図2)あたりから見られました。

この脳波は、同じ部屋(条件➂)あるいは別の部屋(条件➃)でぼんやり考え事をする条件間を比較しても、見られませんでした。

※脳では、神経細胞が電気的な信号によって情報を伝えています。その電気信号が、一定のリズムで流れるので、脳波という波として頭皮上で測ることができます。

図2 脳の画像

共感と関わる脳活動が見られた

このガンマ波という高周波が見られた場合、その脳部位の活動が高まっていると解釈されることが多いです。

そしてこの中部帯状回は、色々な認知活動と関係している脳部位ですが、特に共感するときに活動する脳部位であることに着目して考察がされています。

ただ考え事をしながら漫然と隣にいるだけではなくて、今の自分の身体に注意を向けることで、他者の存在も意識し、その気持ちに気づきやすくなることはあり得そうです。

人と一緒に瞑想することは、自分と他人に思いやりを向けられるコンパッションが持てるようになることに繋がるのかもしれません。

MELONには、オンラインのクラスだけでなく、渋谷にリアルな瞑想サロンがあります。

ぜひご自身で、人と同じ部屋で瞑想するとどうなるか、試しに出かけてみてはいかがでしょうか。