法人

ストレスチェック制度とは?セルフケアにはマインドフルネスがおすすめ

ストレスチェック

2015年12月に改正された「労働安全衛生法」により、従業員50人以上の企業は、毎年1回のストレスチェック実施が義務化されました。しかし、ストレスチェック結果をもとにした具体的な職場環境の改善策を実施している企業は、まだ限られています。

今回は、ストレスチェック制度の目的や導入方法を改めて確認し、チェック結果に基づいた効果的な改善策やセルフケアの方法を紹介します。

労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック」とは

ノートテイキングをする手

現代社会において、仕事のストレスは多くの人を悩ませています。厚生労働省の調査によると、従業員10人以上の事業所で働く労働者の58%が、仕事や職業生活に関することで強いストレスを感じていることが明らかになりました。

そこで、労働者のメンタルヘルス問題への対策として、2015年12月に「労働安全衛生法」が改正され、従業員50人以上の企業に対して、ストレスチェックの実施が義務付けられました。

この制度では、従業員がストレスチェックの質問票に回答し、企業はその結果に基づいて、医師による面接指導を実施し、必要に応じて職場環境の改善を行います。

出典:平成30年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況 P17 |厚生労働省

ストレスチェック制度の目的

PCの画面

厚生労働省が推進するストレスチェック制度の主な目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。

具体的には、3つの目的があります。

  • 労働者のストレスの早期発見

ストレスチェックによって、従業員が抱えているストレスの程度を把握し、早期に支援を行うことができます。また、労働者自身が自分のストレスに気づくきっかけにもなります。

  • メンタルヘルス不調の一次予防

ストレスが原因でメンタルヘルスに不調をきたす前に、そのリスクを軽減することを目指します。

  • 職場環境の改善

ストレスチェックの結果を分析することで、職場に潜むストレス要因を特定し、改善するための対策を講じることができます。

なぜストレスチェック制度が重要なのか

電車内の様子

ストレスチェック制度は、企業にとって極めて重要な取り組みです。ストレスチェックを通じて、従業員の心の状態を把握し、メンタルヘルス不調を早期に発見することで、悪化する前に適切なサポートを提供できます

ここでは、企業と従業員それぞれにおける重要性について解説します。

企業における重要性

ストレスチェック制度は、企業が従業員のメンタルヘルスを守る上で非常に重要な役割を果たします。

(1)従業員の離職率の低下につながる

ストレスチェックによって、従業員のストレスの原因を早期に特定し、悪化を防ぐことで離職や休職のリスクを減らすことができます。それにより全体の生産性が安定的に向上します。

(2)企業の社会的信頼の向上

ストレスチェック制度は、企業の社会的な責任を果たす上でも重要な役割を果たします。近年、働き方改革や多様な働き方の実現が求められる中、従業員のメンタルヘルス問題は、企業が避けられない課題です。ストレスチェック制度を導入することで、企業は従業員の健康と安全に配慮していることを示し、社会からの信頼を得ることができます。

従業員における重要性

労働者にとって、ストレスチェック制度は、自身の心身の健康状態を客観的に把握し、問題点に早期に気づくための貴重な機会となります。

(1)自分のストレス状態を客観的に把握できる

ストレスチェックの結果を見ることで、自分がどの程度ストレスを抱えているのか、何がストレスになっているのかを客観的に知ることができます。

(2)専門家への相談ができる

会社や医師に相談する機会が得られます。職場では言い出しづらいことも、専門家や医師に話をすることで、早めに適切なケアを受けることができます。

ストレスチェックの対象者

ビル街の様子

ストレスチェックを各事業所で受ける対象者は以下の通りです。

  • 期間の定めのない労働契約により使用される者(正社員など)
  • 期間の定めのある労働契約により使用される者のうち
    • 契約期間が1年以上(見込みも含む)である者
    • 契約更新で1年以上の使用が予定されている者
    • 1年以上引き続き使用されている者

上記に加えて、以下の点も重要です。

  • パート・アルバイト労働者:契約期間が1年以上(見込みも含む)で、通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上労働しているパート・アルバイト労働者も対象となります。
  • 出向者:出向元においてストレスチェックを実施し、集団分析を行うことが望ましいとされています。

契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間数の4分の3未満の短時間労働者は対象となりません。

また、従業員数が50人以下の企業においては、ストレスチェックの実施は義務ではありませんが、努力義務として実施が推奨されています。

参考:労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル|厚生労働省

ストレスチェックの実施方法

チェックリスト

続いて、ストレスチェック制度を実施する際の具体的な方法を紹介します。

(1)ストレスチェックの実施頻度

ストレスチェックの頻度については、法律で明確に定められた回数はありません。一般的には、年1回の実施が推奨されています。ただし、労働者の業務内容や職場環境の変化などによって、より頻繁な実施が必要となる場合もあります。

(2)ストレスチェックの実施と結果の集計・分析

ストレスチェックで使用する調査票は、特に決まった形式はなく、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」という3つの項目が含まれていれば問題ありません。厚生労働省では、同省が提供している「職業性ストレス簡易調査票」の利用を推奨しています。

ストレスチェックの実施方法は、紙のマークシート方式や、オンライン方式など、企業が自由に選択できます。厚生労働省では、事業者がICTを用いてストレスチェックを実施する場合に利用可能なプログラム「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供しています。

実施体制や実施者についても規定がありますので、詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。

実施後は回収した回答データを適切に処理し、労働者のストレスレベルを評価します。

(3)ストレスチェック制度の注意点

従業員のメンタルヘルスの不調を予防するために重要なストレスチェック制度ですが、個人のプライバシーに深くかかわるため、情報の扱いには十分な注意が必要です。

また、ストレスチェックへの参加は、原則として労働者の意思に基づいて行われるため、参加の強制はできません。

さらに、結果を踏まえて職場環境の改善に繋げることも不可欠です ストレスチェックの結果を分析し、職場全体でどのような問題があるのかを把握することで、より働きやすい職場環境を作ることができます。

ストレスチェック制度は、労働者の健康を守るための重要なツールですが、その効果を最大限に引き出すためには、関係者全員が協力して取り組む必要があります。 法令を遵守し、制度の目的を理解した上で、適切な運用を行うことが求められます。

ストレスチェック後のフォローアップも重要

コーヒーを片手に話し合っている人たち

ストレスチェックを実施した後は、さまざまなフォローアップを行う必要があります。ここでは、押さえるべきポイント3つを紹介します。

(1)結果の通知

ストレスチェックを実施した後は、遅延なく結果を通知します。

ストレスチェックの結果は、他人の目に触れないよう封書や個別のメールで通知し、結果が「高ストレス」とされた全員に、面接指導を行う旨も記載します。

また、ストレスチェックの結果を通知する際には、セルフケアのアドバイスを入れることが望ましいとされています。

従業員への同意取得の方法など、より詳しい内容は厚生労働省の交付の「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル 」に記載されていますので、ご確認ください。


悪化し続けている、働く人のメンタルヘルス。企業が「セルフケア」の効果を高めるには?」では、セルフケアについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

(2)面談指導

面接指導は、産業医などの専門家と個別に悩みやストレスについて相談できる制度です。専門家から客観的なアドバイスを受け、自分に合った解決策を見つけたり、心のケアを受けたりできます。

面接指導の申し出は、プライバシー保護のもとに行われ、不当な扱いを受けることはありません。面接指導を受けることは、心と身体の健康を守るための大切な一歩です。

(3)セルフケアのアドバイス

ストレスチェックの実施後は、医師の面談指導を受けたり、セルフケアを行うことでストレスを軽減し、心の健康を守ることができます。心の健康は、仕事だけでなく、プライベートな生活を送る上でも非常に重要です。

さらに、セルフケアは従業員個人が行うだけでなく、企業が積極的に支援することが求められています。

セルフケアにはマインドフルネスがおすすめ

セルフケアとは、働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援することです。

つまり、セルフケアは、個人が主体的に行う健康管理ではありますが、企業もその支援を行うことが重要であるとされます。

しかし、実際に従業員のストレス軽減、また職場環境改善のために対策を始めたいと考えても、何らかのエビデンスがなければ経営層への説得ができず、従業員には実施する意味を理解してもらえません。

そこで注目したいのが、効果に関する研究結果やエビデンスが実証されているマインドフルネスです。

企業がセルフケアとしてマインドフルネスを取り入れるメリット

ビル群の写真

ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員に対して、マインドフルネスが有効な対策の一つとして注目されています。その理由としては、以下の点が挙げられます。

マインドフルネスはストレスの低減に効果的

マインドフルネスのストレスの軽減についてはさまざまな実証研究があり、その効果が証明されています。

マインドフルネスでは、自分の気持ちを客観視することで「外的刺激=ストレス」と捉えることが減ります。そうすることで怒りや苦しみといった感情から離れ、ストレスとの向き合い方や体質が徐々に変化していくのです。


マインドフルネスでどのようにストレスを解消するのかについて、詳しく知りたい方は「マインドフルネスはストレス解消に効果的?やり方や注意点を解説!」をご覧ください

集中力が向上し、仕事がしやすくなる

マインドフルネスは、脳の働きを変化させることで集中力を向上させます。

瞑想などを通じて「今」に意識を向ける訓練をすることで、脳のデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる、過去の出来事や未来の心配事をぐるぐる考えてしまうネットワークの働きを抑制します。その結果、タスクへの集中力が高まり生産性も向上します。


DMN(デフォルトモードネットワーク)の活動は『マインドフルネス』で抑制できる」では、マインドフルネスとDMNの関係について詳しく解説しています。ぜひご覧ください!

マインドフルネスを習慣化することで、感情のコントロールが可能に

マインドフルネスは習慣化することで、さらにその効果が向上します。

特に「怒り」や「イライラ」などのネガティブな感情をコントロールすることができるようになります。マインドフルネスを継続的に行うことで、判断力や自制心を司る脳の部位が活性化するため、衝動的な行動が抑えられ、冷静に行動できるようになります。

また、扁桃体と呼ばれる、恐怖や不安を感じる部位の働きが抑制されるため、ストレスに対する耐性も高まります。


『マインドフルネス』で怒りの感情を抑えられる?反芻思考にも効果的」では、より詳しく解説しています。興味のある方は、ぜひ参照ください。

Googleなど大手企業にも選ばれているマインドフルネス

Googleの看板

SONYや大塚製薬、三井住友銀行などの大手企業では、すでにマインドフルネスを研修プログラムとして導入しています。

マインドフルネスを導入したことで有名なGoogleは、2007年から「個性とリーダーシップの開花」を目的とした「Search Inside Yourself(SIY)」と呼ばれるプログラムを社員研修として導入しています。Googleの取り組みをきっかけに、世界中の企業でマインドフルネスを取り入れる動きが広がりました。

これらの企業の導入実例から、マインドフルネスの実践によって注意力やストレス管理能力、問題解決力が向上し、生産性やコミュニケーションの改善、エンゲージメントの向上につながることが実証されています


Googleや、大手日本企業でのマインドフルネス導入事例は「Googleだけじゃない!大手企業がマインドフルネス瞑想を導入する理由とは?」の記事をご覧ください。

まとめ|ストレスチェックとマインドフルネスで、従業員の心身の健康をサポート

ストレスチェックとマインドフルネスは、相乗効果を発揮し、従業員の心身の健康をサポートする強力な組み合わせです。企業は、ストレスチェックの結果に基づいて、マインドフルネスを取り入れることで、より働きやすい職場環境を実現することができます。

法人向け基本プランの画像

MELONでは、法人向けに「マインドフルネス・プログラム」をご提供しています。

医療機関にて復職リワークプログラムとして提供してきたノウハウを活かし、月額定額で従業員の方のストレスケアを行い、高ストレス者の対策、要注意者のメンタルケア予防、プレゼンティーイズムの改善に寄与します(早稲田大学との研究で効果を実証)。

また、研修を行うだけでなく、セルフケア支援ツールで習慣化をサポート。パルスサーベイで従業員の方のストレスやエンゲージメントを測定することで、 ストレス軽減や離職防止、仕事のパフォーマンス向上にコミットします。

さらに「コンサルティングプラン」もご用意しております。人的資本を生かすべく、ヒアリングから課題の発見、解決策のご提案まで一気通貫で行います

課題やご状況にあわせてご提案させていただきますので、お気軽にご相談ください。

資料ダウンロードはこちら