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「インナーチャイルド」とマインドフルネスの関連性を心理学的に解説

鏡に映った子ども時代の自分を見ている大人の女性

「インナーチャイルド」という言葉を聞いたことはありますか?もしかしたらどこかスピリチュアルっぽい印象を持たれている方も多いかもしれません。正直なところ私もちょっと怪しいイメージを持っていたのですが、インナーチャイルドの考え方はマインドフルネスの考え方と通じるところがあると聞き、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会 代表理事であり、株式会社Melon Chief Mindfulness Officerの吉田昌生さんに今回お話を伺いました。  

今回の記事を読むと、「インナーチャイルドとは?」「インナーチャイルドを癒すことは大人にとってどんな効果があるのか?」「インナーチャイルドを癒す方法」についてご理解いただけるはずです。

インナーチャイルド=「自分の内側に子どもがいると見立てる考え方」のこと

子どもの頃の自分を見つめている大人の自分の図

──「インナーチャイルド」という言葉を検索すると、“傷ついた子どもの心”など、定義が色々出てくるのですが、マインドフルネスの観点から見たインナーチャイルドの意味をまず教えてください。

今回は僕が長い間ずっとコーチングを受けている、プロコーチであり心理カウンセラーでもある野口嘉則さんの考え方をベースに、マインドフルネスと相性のいい部分にフォーカスしてお話していきたいと思います。

インナーチャイルドは1980年頃にアメリカから入ってきた言葉で、心理学でのインナーチャイルドは簡単に言うと、“自分の内側に子どもがいる”という風に見立てる考え方のことです。実際に自分の内側に子どもが存在しているかどうかは別として、考え方のツールのようなものです。

ではどうして“内側に泣いている子どもがいる”という風に見立てるかというと、その方が受容しやすくなるからなんです。


──受容ですか?

はい。例えば自分の内側にすごくネガティブな感情が湧いてきたときに、魔物のような汚くて敵のようなものが渦巻いていると思うと、受容どころか圧倒されてしまいますよね。そんなとき、「子どもの頃の自分が今、心の中で暴れている、泣いている」という風に見立ててあげると、「どうして泣いているのかな?そうだね、辛いよね」と、自分のネガティブな感情に寄り添いやすくなります。

もちろんできる人はインナーチャイルドを見立てたりせずに、自分の中の感情に気づいて受容するのでもいいけれど、「自分の中に泣いている子どもがいる」という風に擬人化させると、向き合いやすく、対話をしやすくなりますよね。

マインドフルネスとは“見つめる自分”を育んでいくトレーニング

「見つめる自分」と「見つめられる自分」を説明した図

——「自分の内側に子どもがいる」と見立てるインナーチャイルドの考え方とマインドフルネスは、どういう関連があるんでしょうか?

マインドフルネスは一言で言うと「見つめる自分を育んでいくトレーニング」なんです。セルフアウェアネスやメタ認知などいろんな言い方がありますが、どれも「見つめられる自分」と「見つめる自分」がいるという前提ですよね。

この「見つめられる自分」というのは自分の中にある感情、特に葛藤や悲しみ、不安、怒りといったネガティブな感情のことですが、インナーチャイルドの考え方では、この「見つめられる感情」を「子どものように泣いている自分」という風に見立てます。一方の「見つめる自分」は大人、親ですね。インナーペアレントと表現することができます。

なので、自分の中に「内なる子ども」と「内なる大人」が存在しているというインナーチャイルドの考え方は、マインドフルネスの考え方と共通しているんです。

子どもの頃の抑圧された感情が生きづらさの原因

自分の感情を抑圧している子どもの図

では、どうしてインナーチャイルドを見つめて癒すのが大事なのかというと、大抵の大人は、子ども時代にいろいろな感情を抑圧しています。幼少期にしてほしかったことがされなかったとか、愛されなかった、大事にされなかった、親の期待を押し付けられたとか。誰しも子どもながらにいろんな感情を抑圧しているんですね。

——それは、虐待など明らかに傷つけられたという人以外でも、何らかの抑圧された感情を持っているということですか?

そうです。大抵の人は子どもの頃、自分の感情をしっかりと味わうことなくごまかしたり抑えつけたりして、そのときのネガティブな感情が冷凍保存されてしまっているんです。そして抑圧された感情が未消化のまま冷凍保存されていると、大人になってからも子どもの頃と同じような考え方や習慣をパターンのように繰り返してしまい、自分らしく生きることができなくなってしまいます。

傷ついたインナーチャイルド、すなわち幼い頃に蓋をしていた感情や心の傷に気づいて、自己受容することでインナーチャイルドが癒され、生きづらさや苦しくなるパターンが変わり、自分らしく生きられるようになると心理学的に言われています。

親や先生に何度も受容されていくうちに、自己受容ができるようになってくる

自己受容をしている人の図

ここで自己受容という言葉が出てきましたが、これはマインドフルネスでいつもやっていることなんですよね。

——自分の内側に浮かんだ感情や考えに対して、評価や判断をしないで見ていくことでしょうか?

そうです。マインドフルネスというのは「見つめる自分」を養っていく練習で、ダメ出ししたり否定したりするんじゃなくて、受容する、ただ理解する。

言い換えると、親のように自分の子ども(内側の感情)に「そうなんだね」と寄り添ってあげることですが、幼少期に親との関係で「親から無条件に受容される」という体験を何度も何度も繰り返していくと、自分の中にいつも優しく見つめて受け止めてくれるインナーペアレントが内在化されていき、だんだんと自己受容できるようになってくるんです。

つまり、親や先生のような保護者から何度も受容されることによって、自分の内側に安心感が生まれ、親がいなくても心の中で親の声のようなものが響いて、自分で自分に「そうだよね、そんなこともあるよね」と言ってあげられるようになります。他者受容から自己受容ができるようになっていくんです。

——自分自身の中に、親のようなインナーペアレントが内在化して、自分で受容できるようになっていくということですね。

そうです。反対に、親から「そんなんで泣くんじゃない!」とか「男の子なんだからメソメソするんじゃない」という風にダメ出しをされることが多く、自分の感情を受容される経験が少ないと、自分で自分に対しても厳しく言うようになってしまいます。「そんなんじゃダメだ」と言う声が、頭の中でビデオテープのように繰り返し再生されるような感じです。

——インナーペアレントが育まれない、ということですね。

実は私も父親に厳しく言われて育ったため、失敗したりうまくいかないとすぐに「自分には向いてない」「自分はダメだ」と思いがちでした。ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまったりして、ストレスを跳ねのける力、レジリエンス(精神的回復力)が弱かったんです。

そこからいろいろ学んで、「マインドフルに自分の感情に気づいて、ジャッジしないで受け入れることが大事なんだ」ということが分かり、そういう風に自分を受容できた方がメンタルが安定するしレジリエンスも高くなってうまくいくことに気づくようになりました。

「落ち込むときもあるよね」とか「それは悲しいよね」という風に、自分で自分の感情を受容できるようになると、自分の中の泣いている子ども=インナーチャイルドが癒されていくんです。

——自分で自分の感情を受容できるようになると、癒されていくんですか?

そうなんです。人間の感情は、気づいてちゃんと意識して受容してあげると消化されていくという性質があります。

未消化な感情として抑制されてしまうとそれが生きづらさに繋がってしまうことがありますが、しっかりと「悲しかった、寂しかった、本当はこうしてほしかった」という感情に気づいて、自分の中でしっかりと味わうと、インナーチャイルドは癒され、同じことを繰り返さなくなっていきます。

「これは残念だなぁ、悲しいなぁ」という風に落ちるところまで落ちていくと、最終的に落ち着く、グラウンディングするんです。チョコレートと同じで、「苦いなぁ、甘いなぁ」と味わっていくとだんだんなくなるじゃないですか。感情もそのまま永遠に落ち続けるということがなくて、落ちて落ちて味わい尽くすと落ち着きます。

自分で受容するときは自分自身をハグしたりするのもおすすめです。

自分ひとりでできないときは、カウンセラーなど受容のプロを頼ろう

カウンセリングを受けている人

——自己受容がなかなか難しい人もいるかもしれません。

そうですね、特に親から受容されなかったという人は、自分で自分のインナーチャイルドを癒すのは難しいので、その場合はカウンセラーなど受容的な人に受容してもらう体験が必要になってきます。

ここで注意してほしいのが、カウンセリングだときちんとお金を払って、限られた時間の領域の中で受容してもらいますが、受容してくれる人が友達など身近な人になると、それが依存関係になってしまうこともあります。「もっと私のことを受容してほしい!」とエスカレートしてしまったり、あるいは受容する側が頼られることによって「この人はダメだから私が支えてあげないと」といった風に共依存関係になってしまったり。

なので、カウンセリングのようなプロを頼るか、友達の場合はきちんと枠組みを作ってどちらかに負担が出ないように注意する必要があります。

——ネガティブは感情と向き合おうとすると、すごく苦しくなることもあります。

マインドフルネスで大事なのは感情と向き合って受け入れることではあるのですが、人によってはまだ時期ではないこともあるので、絶対に無理をしないことが大切です。

自己受容するときは、自分が落ち着く物をそばに置いておいたり、安心するような記憶などをあらかじめイメージとして持っておいて、ネガティブな感情に圧倒されそうになったときに戻って来れる準備をしておくこともおすすめです。そして少しでも怖いなと思ったら、無理せず蓋をすることも大事です。

自己受容ができるようになると、他者受容もしやすくなる

自己受容と他者受容は比例することを説明した図

自己受容ができるようになる、つまりインナーチャイルドを自分で癒せるようになると、他者受容もしやすくなります。つまり、自己受容と他者受容は正比例するんです。逆に、自分の中の悲しみや弱さをジャッジしてずっと抑圧し続けている人は、他人の中の弱さやネガティブな感情に寄り添えなかったりします。

なので、受容してもらう相手は、ある程度自己受容ができている人を選んで話すことが大事になってきます。またいつもは受容的な人でも、時間や心に余裕がないときは、なかなか相手を受容することができないので相談するタイミングも大事になってきます。

ネガティブな感情も大事にすると、結果的に幸せに気付きやすくなる

瞑想をしている女性

——瞑想をするとネガティブな感情になってしまうという人も結構いると聞きます。

そうですね、やはり瞑想をすると自分では向き合いたくない感情が出やすくなるので、自然に涙が出てくるなど、いろんな感情が出てきますよね。

ただ、「今ここに集中して無になること」だけがマインドフルネスの効果というわけではなく。ネガティブな感情を敵とかダメなものという風に見ていくよりも、「幼少期の自分が泣きながら何かメッセージを伝えようとしているんだ」という風に見ていくと、自己受容に繋がり、その感情をしっかりと味わっていくうちに、スッキリしたり生きづらさがなくなったり、ポジティブな感情をより感じられるようになります。

逆に、ネガティブな感情を抑圧するとポジティブな感情も感じにくくなってしまいます。なので「ネガティブな感情も、実は自分の一部なんだ」という風に見てあげると、結果的に幸せに気づきやすくなりますよ。

「すべての感覚や感情は自分の大切な一部分であり、メッセージである」という風に捉える。そのためにインナーチャイルドを見立てる考え方はとても有用なので、ぜひ試してみていただけたらと思います。


今回のMELONインストラクター吉田さんのお話により、“見つめる自分を育む”という点で、心理学的なインナーチャイルドとマインドフルネスは共通点があることが分かりました。

ただ、いざ自分でインナーチャイルドを受容してみようと思っても、なかなか集中できなかったり継続が難しかったりするかもしれません。MELONではMELONオンラインというオンライン・マインドフルネスサービスを提供しています。マインドフルネス初心者の方、一人だと継続できない方、やり方が正しいのか不安な方も、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが丁寧に分かりやすく実践のサポートをお手伝いします。

今回の記事を読んで、瞑想を通して自分の中のインナーチャイルドと向き合うことに興味を持った方は、是非レッスンに参加してみて下さい。まずは2ヶ月継続していただければ、何らかの効果を感じてもらえるはずです。

MELONオンラインを説明する画像