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【久賀谷亮 氏・インタビュー】気軽で効果大、マインドフルネスの果たす役割とは?

久賀谷亮 イェール大学 医学博士 UCLA 非常勤医 カイザー

MELONのシニア・アドバイザーを務める医学博士の久賀谷亮(くがや あきら)氏は、日米で25年以上、臨床医としてのキャリアを重ねてきました。

「マインドフルネス認知療法」を臨床医として取り入れてきた久賀谷亮 氏は、著書に「最高の休息法」というマインドフルネスの入門書を持つなど、マインドフルネスのインフルエンサーとして活動しています。

本記事では、久賀谷亮氏に「マインドフルネスを診療の現場に取り入れた背景」について東京と米国・ロサンゼルスをつないでインタビューしました。

久賀谷 亮(くがや あきら)
MELONシニア・アドバイザー/医師(日・米医師免許)医学博士

日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだ後、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に従事する。カイザーグループ、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバー UCLA 非常勤医などを経てロサンゼルスにて「 TransHope Medical, Inc. 」を開業。同院長として、マインドフルネス認知療法や TMS 磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開。臨床医として日米で 25 年以上のキャリアを持つ。著書・講演・セミナー・監修や、脳科学に基づくマインドフルネス休息法のインフルエンサーとして尽力を注ぐ。


未知の領域にチャレンジすることが好き

——久賀谷先生は、ロサンゼルスにて「TransHope Medical, Inc.」を開業され、院長として、マインドフルネス認知療法も取り入れた診療を展開されています。もともとは日本で精神薬理の医学者として臨床や研究に関わっていましたが、なぜ米国に渡られたのですか?

久賀谷亮先生(以下、久賀谷:私はもともと、人と同じことをやるのではなく、オリジナリティのあるものや未知の領域にチャレンジしていくことが好きでした。だから日本にフィットしなかったのかもしれません(笑)。あるときアメリカに来て、それからずっといます。

デスクの上にパソコンと資料が置いてある画像

——肩書きにイェール大学医学部精神神経科卒業、アメリカ神経精神医学会認定医、アメリカ精神医学会会員とあります。ご専門は精神医学ですか?

久賀谷はい、専門はメンタルヘルスと脳科学です。

とんでもなく画期的なマインドフルネス

——久賀谷先生がマインドフルネスに関心をもたれたきっかけは?

久賀谷:マインドフルネスは、私が専門としているメンタルヘルスと脳科学の両方にまたがる考え方です。また、言うなれば、東洋発で、西洋で花開いた文化。それが、日本からアメリカに来た自分とオーバーラップする部分がありました。

私は中学・高校時代に剣道と弓道をたしなんでいたのですが、武道は、始まる前に「黙想」をします。後からよく考えてみたら、それはまさにマインドフルネスな時間だったんですね。知らず知らずのうちに、ずいぶん前から実践していたわけです。

そういえば、剣道で面をかぶる時に使う手ぬぐいがあるのですが「無」と書かれたものが好きだったことも今思い出しました。マインドフルネスでしょう(笑)。


——久賀谷先生が診療にマインドフルネスを取り入れられたのはなぜだったのでしょうか?

久賀谷アメリカでは、早い時期からそこかしこにマインドフルネスという言葉や実践者が見られました。日本では、マインドフルネスは仏教=宗教と結びつけて考える人も多いようですが、西洋では宗教的な部分を意図的にそぎ落として、メソッドにしてきました。

60〜70年代に脳科学や心理学を専攻する科学者の卵たちが精神世界探求の旅を始めたことが、米国で研究と実践が進んだ背景のようです。

例えば、こういう研究があります。鬱についてのマインドフルネスの予防効果について、それまで薬を飲んでいた人が服薬をやめ、マインドフルネスのみをやったところ、その後2年間に鬱状態が再燃する率が薬を飲み続けた人と変わらなかった。つまり強い鬱状態を予防する効果があることがわかりました。

久賀谷亮 マインドフルネス 脳科学

久賀谷亮マインドフルネスは、医学的に見て中途半端な位置づけになります。「治療治療」したものでもないし、一方でしっかりした効力もあります。これだけシンプルな方法が、しかもしっかり脳の構造を変えるのです。医学者から見ると、とんでもなく画期的な話です。

私は薬だけ出す医療に疑問を持っているので、マインドフルネス認知療法も取り入れた診療を行うことにしたんです。

手ぶらで気軽にできるシンプルなメンタルヘルス法

——今、コロナ禍で世界中の人々のメンタルヘルスが悪化しています。

久賀谷亮日本では、新型コロナウイルスによる自粛生活が叫ばれ始めた頃から約5か月後に自殺者が増え始めました。

ハネムーンピリオド(ハネムーン期)」という言葉をご存じですか? これは、災害が起きてしばらくの間は自殺率が上昇しないことがいくつかの災害後見られているということです。

しかし何か月か経って、つまり遅れてから自殺率が上昇しまう。この上昇しない最初の何か月かの時期を「ハネムーンピリオド(ハネムーン期)」といいます。

災害は不定期に繰り返します。心の危機が遅れてやってくるという事実を知の資産として受け継ぎ、それに備えた体制を願ってやみません。

胸に手を当てている女性の画像

——このような時にマインドフルネスが果たすことのできる役割は何でしょうか?

久賀谷亮マインドフルネスは「治療」ではないので、医師の指導が必要なわけでもないし、免許が必要なわけでもありません。

シンプルでカジュアルな方法なのに、とてもメンタルヘルスに恩恵があることがわかっているので、コロナ禍のような災害時にはこういった「手ぶらで気軽にできるシンプルなメンタルヘルス法」が一番いいのではないかと思います。ボランティアの方でも施しうるこの方法を、肩の力を抜いて活用してほしいですね。

カジュアルにマインドフルネスを試してみてほしい

——最後に、日本のみなさんへのメッセージをお願いいたします。

久賀谷亮日本人は世界でも比較的、心の内を語らない民族だと言われています。我慢強い人が心が強いのだという文化があるんですね。だからストレスがたまりやすい。もし心がつらくなった時、マインドフルネスをぜひカジュアルに試してみてほしいんです。

日本は英語を話す人も増えましたし、これだけ国際化してきているんだから、そろそろマインドフルネスを肩肘張らずに気軽に始めてみてほしいと思います。

災害時のストレス緩和にも、日常生活の中で心を整えるにも効果のある、素晴らしい方法ですから。このソフトでパワフルなマインドフルネスが、心を語らない民族にとって一つの拠り所になることを願います。


マインドフルネスの定義や歴史、効果や実践方法については、こちらの記事を参考にしてください。