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人材育成予算は、もう「人」だけに使う時代ではない 〜AIが変える育成投資の常識〜

MELONの代表 橋本大佑が毎月お届けするコラム。組織のウェルビーイングを高め、生産性向上や離職防止、さらにはパフォーマンス向上を実現するための最新トピックスをご紹介します。


AIのトークン(API利用料)が、人事予算に計上される時代になりました。

一見、奇妙に思えるかもしれません。しかし、これはある意味で自然な流れです。AIへの支出が人件費の一部として認識される今、私たちは人材育成の意味そのものを問い直す転換点に立っています。

AIは、均質に、無限に、育成し続ける

人を育てるには、早くても数ヶ月、多くの場合は数年かかります。教える側の力量、教わる側のコンディション、タイミング——これらが絡み合い、育成の速度も成果も、なかなか一定にはなりません

一方、AIは同じ問いに対して、何度でも、何人分でも、均質に答えを返し続けます。営業資料の作成、データのレポーティング、社内FAQ対応など、再現性の高い業務は、人を育てて任せるより、AIに任せる方がはるかに効率的です。

3年前には人が担っていた業務が、今日のオフィスではAIに移っている。そんなケースが、業種を問わず急速に広がっています。

では、人がやるべきこととは何でしょうか。

価値が残るのは、両端だけ

スマイルカーブという概念があります。製品がバリューチェーンを流れる中で、研究開発などの上流と、販売・サービスなどの下流に付加価値が集中し、中間の製造・組立の付加価値が最も低くなるという考え方です。これはAIによる業務代替にも同じ構造が見えます。ルーティン化・標準化しやすい中間領域ほど置き換えられやすく、価値が残るのは両端の「構想する力」と、「顧客と向き合う力」です。どちらも、一次情報を肌で感じる力が問われる領域です。

AIは合理性の塊です。しかし、人が人に惹かれる瞬間は、必ずしも合理的ではありません。感情を動かし、関係をつくり、この人だから買うと思ってもらえる。それは、倫理観、感性、共感力といった、人間らしさの根幹ではないでしょうか。

AIが台頭するほどこうした人間力の価値は逆説的に高まっていくと、一経営者として強く実感しています。

カッツモデルが示す、育成投資の見直し

ここで、多くの企業でなじみ深いカッツモデルを見てみましょう。

出典:Robert L. Katz, Harvard Business Review, 1955

カッツモデルは、役職ごとに求められるスキルの割合を示したモデルで、テクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルの3層で構成されます。 

このうち、テクニカルスキル(業務遂行に必要な専門知識や技術)は、これまで現場層の研修投資の中心でした。マニュアル化できるもの、繰り返しできるもの、手順で覚えられるものは、すべてここに含まれます。

そして今、そのテクニカルスキルの大部分が、AIに代替されつつあります。
では、そこに積み上げてきた育成予算を、このまま継続してよいのでしょうか。

近年の傾向として、マネジメント層のみならず現場を含むすべての層で、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルがより重視されるようになっています。投資対象のシフトは、すでに始まっています。

育成の量より、質へ

テクニカルスキルはeラーニングや手順書で補えます。しかし、ヒューマンスキルや倫理観・感性を磨くには、体験ベースの学習、内省、対話が欠かせません。

すべての社員を対象にした横一線の研修より、個人の内面に働きかけ、自分はどう感じ、どう判断し、どう関わるかを深める機会の設計が、これからの人事担当者に問われます。

変化のスピードは、待ってくれません。AIにできないことへの投資シフトを、どれだけ早く、戦略的に実行できるか。それが、これからの組織の強さを決めると考えています。


MELONでは、ヒューマンスキルの核心ともいえるセルフマネジメントやEQ(感情知性)の観点から、社員一人ひとりの人間力を引き出す法人向けプログラムを提供しています。

現在の育成投資の中身に疑問を感じ始めている方がいれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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