法改正でストレスチェックがすべての企業に義務化へ〜診断だけで終わらせない、組織を変えるための次の一手とは?〜|MELON CEOコラム

MELONの代表取締役CEO・橋本大佑が毎月お届けするコラム。組織のウェルビーイングを高め、生産性向上や離職防止、さらにはパフォーマンス向上を実現するための最新トピックスをご紹介します。
2025年5月の法改正により、従業員50人未満の事業所にもストレスチェックの実施義務が新たに法律で定められ、今後、制度の対象がすべての企業に広がることになりました。
これまで対象外だった小規模事業所においても、労働者のメンタルヘルスケアが法的に求められる時代となり、ストレス対策は「やった方がいい取り組み」から、「やらなければならない組織責任」へと、その位置づけが大きく変わろうとしています。
しかし、一足早く導入された中堅・大企業の運用実態を見てみると、ストレスチェックが「診断で終わるだけ」の形骸化しているケースも少なくありません。
なぜストレスチェックは形骸化するのか
そもそも、ストレスチェックの本来の目的をご存じでしょうか。厚生労働省は、その制度の導入目的を「一次予防」、すなわち不調の予兆を早期に捉えて悪化を防ぐこと、さらに「セルフケアの促進」と明確に示しています。
このように、従業員が自らの状態を把握し、早めにセルフケアに取り組むことを促すのが、この制度の本来の目的です。
しかし、現場では「ハイリスク者にどう対応するか」といった三次予防的な発想に偏りがちで、本来の一次予防の視点が置き去りになっています。さらに、潜在的なハイリスク層への早期アプローチも後手に回りやすく、せっかくの結果がプレゼンティーイズムの改善や職場の生産性向上に十分活かされていないケースも見受けられます。
これは、いわば健康診断を受けて結果だけを見たものの、自らの生活習慣を見直したり、健康維持に向けた行動を取ったりする意識が生まれないというようなもの。表面上はストレス対策に取り組んでいるように見えても、結果を活かせず、結局、何も変わらないという状況を招いてしまっているのです。
では、企業はストレスチェックをどう組織づくりに活かし、従業員にセルフマネジメントを促すべきなのでしょうか。
セルフマネジメントこそ一次予防のカギ

一人ひとりが自らのストレス状態に気づき、早い段階で適切な対処ができるようになる——。その力を育むことこそ、企業が目指すべきゴールです。
どれだけ働き方改革を進めても、完全にストレスを取り除くことはできません。人間関係、プレッシャー、時間的制約など…… それらは仕事の本質に深く根ざしており、要因をゼロにはできないからです。
だからこそ必要なのは、ストレス要因をゼロにすることではなく、従業員一人ひとりが自らの状態に気づき、適切に対処できる“セルフマネジメント”の力です。このスキルは、単に不調を防ぐだけでなく、仕事のパフォーマンスを維持・向上させる力にもなります。
さらに、そうした個人が増えることで、組織全体のレジリエンス(回復力)も高まり、変化に強い職場づくりへつながっていくのです。
ストレスチェックを“見るだけ”で終わらせないために
ストレスチェックは、単なる制度対応で終わらせるものではありません。チェック結果には、従業員の心身の状態に向き合い、健やかに働ける環境をつくるための大きなヒントが詰まっています。
大切なのは、結果を「見るだけ」で終わらせず、そこから具体的な行動や職場の変革につなげること。ストレス要因をゼロにすることは不可能だからこそ、従業員のセルフマネジメントの力を育み、組織全体のレジリエンスを高めることが求められます。
ストレスチェックは「義務」ではなく、「組織の未来をつくる第一歩」。その意義を正しく理解し、結果を行動変容と文化づくりに結びつけることが、これからの企業に問われています。
MELONでは、「セルフケアを継続できる仕組み」を組織に根づかせる支援を行っています。単なるツールや研修の提供にとどまらず、企業と共に「組織にとって本当に意味のある取り組みとは何か」を考え伴走します。
制度の先にある、よりしなやかで強い組織をつくる。その道のりをご一緒できれば幸いです。