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子どもも「メンタルヘルスを学ぶ」時代!学校で行われる取り組みの最前線とは

勉強をしている子どもの画像

近年、大人だけでなく「子どものメンタルヘルス対策」が急務になっているのをご存じでしょうか?夏休みの終わり頃には毎年子どもたちの自殺に関するニュースが流れ、いじめや引きこもりの問題もメディア等で大きく取り上げられています。

そんな中、「子どもがメンタルヘルスについて学ぶ方法」に関するスペシャルクラスが2022年7月31日に開催されました。講師は児童精神科医の岡 琢哉(おか たくや)さんで、今回の記事はクラス内容を文章化したものになっております。

子どものメンタルヘルスにどのように向き合えば良いのか、そして実際に学校ではどのような取り組みが行われているのかについて理解できる記事になっております。是非最後までチェックしてみて下さいね!

児童精神科から見たメンタルヘルスの分析

医者がパソコンの前で手振りをしている画像

子どもを取り巻く環境が急激に変化する現代社会において、児童精神科の定義は複雑化しています。日本児童青年精神医学会が発表しているものを要約すると、「子どもが示す問題行動や身体精神症状を検討し、環境や行動等を総合的に評価しながら、子どもの精神的健康の達成を目指すもの」となります。

このように児童精神科自体は少し難しい概念ではありますが、現場の「児童精神科医」は子どものメンタルヘルスについて以下の3つを評価し、医療的介入を行っています。

  1. 「つまずき」発達レベル・気質及び生物学的背景
  2. 「傷つき」家族や友人関係・保育所・学校における行動
  3. 「悪循環」多彩な問題行動や精神身体症状

まず「つまずき」に関しては、子どもが「つまずきやすい性質」を持っているのではないかという点について考えます。例えば成長に伴って獲得していく発達のレベルに問題があるのではないか、もしくは気質や生まれつき持っている性質に特徴があるのではないかといったことを検討します。人のつまずきやすさはこれらに左右されてしまう傾向があります。

次に「傷つき」に関しては、家族や友人関係・保育所・学校において、「どういった理由で傷ついているのか」を評価します。これは「つまづき」とも大きく関連しており、つまずきやすい子どもは傷つきやすい子どもでもあります。

最後に「悪循環」に関しては、つまずきと傷つきの中で嫌な思いや苦しい思いが重なり、問題行動や精神身体症状が出ていないかを評価します。基本的にはこの「悪循環」に至ると病院に通う必要がでてきます。

子どものメンタルヘルス問題とその予防

地面でうつむく小学生女子の画像

WHOが2011年に発表したデータによると、不安症やうつ病などの精神疾患を抱える子どもは全体の10〜20%にのぼります。1クラス30人のうち、3〜6人ほどの子どもはメンタルヘルスに何らかの問題を抱えていてもおかしくないという計算になるのです。すなわち、子どもがメンタルヘルスの不調を訴えることは特別なことではなく「当たり前のこと」という認識を大人が持つことが大切になります。

また、何か悪い出来事が起きた時に不安が強くなったり鬱っぽくなったりするけれど、診断自体はつかないメンタルヘルスの問題を「subthreshold psychiatric problems=診断基準を満たさない精神医学的問題」と呼びます。

この問題は「病気ではないし、我慢して頑張ればいいんじゃないの?」と思われてしまうのですが、実は放っておくと成人後に様々な悪影響をもたらすことが分かっています。例えば犯罪傾向が高くなったり、生涯年収や最終学歴が低くなったりするのです。

このような子どものメンタルヘルス問題を予防するためには、専門家が頻繁に関わらなくてはいけないのでしょうか?実はそうではなく、子どもにとって身近な大人、特に親や学校の先生が積極的に取り組みを行うことが重要なのです。次の章では実際にどのような取り組みを行っているのかという点について見ていきます。

学校で実施されているユニバーサルアプローチ

メンタルヘルスアプローチの図

メンタルヘルスの予防に関するアプローチは上の図のように大きく4段階に分けることができます。最近では全く症状のない一般の人に対するユニバーサルアプローチが「精神的レジリエンス=回復力」を高める手段として注目されています。ここからは学校で行われているユニバーサルアプローチの事例をご紹介します。

日本発の心理教育プログラム「Up2-D2」

画像は英語版:ResearchGateより引用(https://www.researchgate.net/figure/Example-of-the-Up2-D2-illustrations-a-Three-characters-and-a-facilitator-b-An-example_fig2_337234281)

Up2-D2プログラムは、「精神的レジリエンス」の向上を目的とした日本発の心理教育プログラムです。内容としては、不安・抑うつ・感情調整に介入する認知行動療法(CBT)の技法を、漫画を用いたテキストを用いて理解を促すものになっています。

漫画中には感情調整が苦手な「あかまる」と抑うつ傾向がある「あおすけ」、不安が強い「きみ」、みんなに知恵を授ける「白じい」が登場し、学校で起こる様々な問題にどのように対処していくのかが描かれます。

一回45分、計12回の構成になっており、座学だけでなくグループワークによる実践も含まれています。授業自体を専門家ではなく「学校の先生」が行うことも大きなポイントで、先生自身のメンタルヘルスに対する知識も向上します。

プログラムの前後に行ったアンケートの結果から、子どもたちの自己効力感と社会的スキルが上がり、全体的にメンタルヘルスの問題が改善したことがわかりました。またプログラム終了後には3ヶ月後まで効果が持続していたという結果も出ています。

子どもたちが楽しみながらメンタルヘルスについての知識を深めることができるツールとして、非常に注目されているプログラムです。

学校で実施されている「自閉症特性の高い子どもたち」への対応

下校している小学生の画像

「自閉症の傾向がある子どもは、一般学級ではなく特別支援学級にいる」というイメージを持たれている方も多いかと思いますが、実は一般の学級にも自閉症特性の高い子ども達が存在します。そういった子ども達は一般の子どもに比べてメンタルヘルスの問題を抱えやすいということが分かっており、専門のプログラムが存在します。

自閉症傾向を持つ子どもの不安軽減を目的とした「フレンズ教室」

フレンズ教室は、自閉症を持つ子ども達に対する「集団認知療法プログラム」です。4〜5人程度の少人数で実施し、オリエンテーション・心理教育・認知再構成法・社会的スキル訓練・応用学習・まとめの7つで構成されています。

一回1時間、計10回の構成になっており、Up2-D2に比べると自閉症の子どもたちに適した内容になっています。例えば彼らはワーキングメモリー(一時的に情報を脳に保存しておく能力)が一般的な子どもよりも低いため、情報量や文章量を少なくしたり、ルールや仕組みを先に提示するといった工夫がなされた教材を使用します。

プログラム中のみならず、プログラム後も自閉症の子どもたちに生活面での行動変容があり、一定の効果が認められました。

またフレンズ教室は保護者が見守る中で行われるため、このプログラムを通して保護者同士の交流が生まれ、不安が軽減したという声もありました。結果として家庭内での対応に余裕ができたという副次的な効果もあったのです。

子どもがメンタルヘルスについて学ぶ方法|まとめ

校舎の画像

本記事では「子どものメンタルヘルス」について詳しく掘り下げてご紹介しました。子どもがメンタルヘルスに関する問題を抱えることはなんら不思議なことではなく、むしろ普通のことです。大切なのは「つまずき→傷つき」のループにはまってしまう前に身近な大人が手を差し伸べることであり、子どものメンタルヘルスを守るために一番有効な手段であると言えます。

また、近年メンタルヘルスを考える上ではマインドフルネスも重要視されています。「子どもと一緒にマインドフルネスを体験してみたい」「自分自身のメンタルヘルスにもきちんと向き合いたい」という方には、MELONが提供する「MELONオンライン」というオンライン・マインドフルネスサービスがおすすめです。

初心者の方や、やり方が正しいのか不安な方も、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが丁寧に実践のサポートをするので安心です。

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MELONオンラインの画像

講師紹介:岡 琢哉さん

児童精神科医。岐阜大学医学部附属病院精神神経科、東京都立小児総合医療センター児童思春期精精神科、医療法人社団神尾陽子記念会 発達障害クリニック、岐阜大学医学系研究科博士課程を経て、現在は株式会社カケミチプロジェクト代表取締役。訪問看護事業、インターネット上の情報発信、放課後デイサービス向け研修事業を展開。