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なぜ、本当に届けたい人にメンタルヘルス施策が届かないのか?浸透の鍵となる“イノベーター理論”とは|MELON CEOコラム

CEOコラム_イノベーター理論Image by Vecteezy.com

MELONの代表取締役CEO・橋本大佑が毎月お届けするコラム。組織のウェルビーイングを高め、生産性向上や離職防止、さらにはパフォーマンス向上を実現するための最新トピックスをご紹介します。


「従業員のためにメンタルヘルス施策を導入した。けれど、本当にケアが必要な社員ほど利用してくれない」。多くの人事担当者様から、こうした切実な悩みを伺います。

ストレスチェックやEAP(従業員支援プログラム)といった「ハイリスクアプローチ」が、今や多くの企業で導入されています。社員のための施策であるはずなのに、なぜ利用が進まないのでしょうか──。

実はその背景には、企業側の“ある思い込み”が潜んでいます。メンタルヘルスを「不調か、健康か」という二元論で捉え、「不調な人だけに支援を届けるべきもの」と考えてしまっているのです。

「不調」と「健康」の間に広がる、見過ごされがちなグラデーション

グラフイラスト
Image by Vecteezy.com

従業員の心の状態は、白か黒かではっきりと分けられるものではありません。実際には、「好調」から「不調の一歩手前(メンタルダウン予備軍)」、そして「深刻な不調」まで、グラデーションを描いています。

多くの企業で行われているハイリスクアプローチは、このグラデーションの「深刻な不調」の解決のみを目指すものです。

二元論で捉えている施策だと、「プログラムを利用する=不調者であると認める」というネガティブなイメージを助長し、相談や参加をためらう空気ができてしまうことがあります。さらに「ヘルスケア施策=不調者のもの」とされ、結果的に多くの従業員が「自分には関係ない」と感じてしまいます。

しかし実は、深刻な不調を防ぐには、“まだ不調ではない人たち”こそを支える視点が求められます。たとえ今は健康な社員でも、新しいプロジェクトの重圧やプライベートの変化によって、いつ「予備軍」や「不調」な状態に足を踏み入れるかわかりません。

つまり、「不調者を救う」だけでなく「不調者を生まない」仕組みによって、「平均点」を引き上げることが、組織のヘルスケア課題を解決する鍵となるのです。

組織の「平均点」を引き上げるポピュレーションアプローチ

不調が深刻な層だけでなく、組織全体の心身の健康水準を底上げする。これを「ポピュレーションアプローチ」と呼びます。

ハイリスク層を救い出すことに加え、組織全体の平均点を引き上げることで、結果的にハイリスク層に陥る従業員の数を減らし、さらに「予備軍」を健康な状態へと引き戻す。このアプローチは、組織全体の生産性やエンゲージメント向上に直結する、極めて戦略的な一手といえます。

しかし、ここには新たな壁が立ちはだかります。組織全体を変化させる施策は、どうすれば形骸化せずに浸透させられるのか──。トップダウンの号令だけでは、従業員一人ひとりの主体的な行動変容には結びつかないからです。

組織変革の鍵はイノベーター理論の「最初の16%」にあり

イノベーター理論図
エベレット・M・ロジャーズのイノベーター理論「普及のベルカーブ」をもとに作成

ここで有効なのが、新しい商品やサービスが世の中に普及するプロセスを説明した「イノベーター理論」です。

組織も一つの社会です。新しい施策に対して、すぐに飛びつく「イノベーター(革新者:2.5%)」、次に続く「アーリーアダプター(初期採用者:13.5%)」が必ず存在します。

施策を成功させる秘訣は、全員を一度に動かそうとしないことにあります。まずはこの「16%」の層に、効果や意義を実感できる体験を提供するのです。イノベーターやアーリーアダプターたちが感じたポジティブな変化や手応えは、やがて「口コミ」という有効なコミュニケーションツールとなって、自然発生的に社内に広がっていきます。

「あの研修、面白かったよ」「最近、集中力が上がった気がする」。そんな何気ない会話や、休憩室に貼られた一枚のチラシがきっかけとなり、様子を伺っていた次の層「アーリーマジョリティ(前期追随者)」が動き始めます。複数人で、複数回施策に参加する流れが生まれれば、それはもはや「やらされる施策」ではなく、「自分ごと化された行動」に変わるでしょう。

こうして社内に自然な流れが生まれることで、当初は「自分には関係ない」と遠巻きに見ていた層や、助けを求めることさえできなかった本当にケアが必要な層にまで届いていくのです。


もし今、「届けたい人に届かない」と感じているなら、それは組織に変化を起こす絶好のタイミングかもしれません。

株式会社Melonでは、ヘルスケア施策の浸透を促すために、法人向けのセルフマネジメントプログラムやコンサルティングサービスを提供しています。科学的根拠に基づくセルフマネジメントプログラムを、オンラインや研修を通して実践していただくことで、組織全体の「平均点」を引き上げるポピュレーションアプローチを可能にしています。

なんとなく受ける1度の研修ではなく、セルフマネジメントを組織文化として根づかせる。その第一歩として、まずは貴社の「最初の16%」から変革を始めてみませんか。

まずはお気軽にご相談ください。貴社の課題に寄り添い、最適な解決策をご一緒に考えさせていただきます。

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