心の資本

 私が大学に入学し初めて経済学入門のクラスで習った公式の一つにこんなものがありました。

  Y=f(K, L)

 Yは生産高で世の中に生み出される付加価値、Kは資本ストック、Lは労働力とされ、fは関数です。経済学では経済活動を単純な数式モデルに当てはめて考えるので、この数式が意味していることは、お金と人間の労働力によって世の中に付加価値が生み出されるということです。当時は分かったような気になっていましたが、よく考えるとこの数式から抜け漏れている要素はたくさんありそうです。

 近年、その中でも経営理論の中で注目されるようになってきているのが人間の心です。例えば、マインドフルネスをはじめ、労働環境における様々な革新的取り組みを行っているGoogle社が数年前から提唱している新しい概念があります。それは「心理的安全性」と呼ばれ、簡単に言えば組織の中で不安や恥ずかしさを感じることなくリスクある行動を取ることができるかということです。最近注目を浴びている「ティール組織」においても心理的安全性は重要な要素と考えられているようです。組織の中でお互いをチームの一員として認め合い、各メンバーが自由に意見を出し、チャレンジができる雰囲気を醸成できるかがチームリーダーや経営者に求められています。

 また次のようなことを提唱する研究者も出てきました。

米カリフォルニア大のソニア・リュボミアスキー教授によると、「自分は幸福だ」と感じている人はそうでない人より仕事の生産性が31%高く創造性は3倍になることが分かった。幸福心理学の第一人者である同教授は「成功が幸福を招くのではない。幸福(だと感じること)が成功を生むのだ」とも指摘する。

日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46719530Y9A620C1TCR000/

 成功するから幸せになるのではなく幸せな人が成功するという、今までの考え方とは因果関係が真逆の考え方です。この理論に基づけば、組織のリーダーはメンバーの幸福度を高めることにより、より高いパフォーマンスを得られることになります。逆に言えば、不安や悲しみを心に抱えているメンバーが多い組織は悪循環に陥っていきそうです。

 このように人間の心とビジネスや経営の世界は次第に距離が縮まりつつあります。人間を単純な労働力として扱い、会社の利益を最大化させようとする経営スタイルは今後しだいに淘汰されていくことになるのでしょう。(既にブラック企業という言葉が普及してますが。)もしかしたら冒頭に挙げた数式は次のように変えていかないといけないのかもしれません。

  Y=f(K, L, M)

もちろんMはマインド(心)です!